断られるのが怖い人は、話しかける前に心の中で計算してる。話しかけるのは怖い、話しかけなくてもまあ平気。問題は、この計算が間違ってることだ。
話しかけるときの緊張は、だいたい30秒。心臓がバクバクして、手のひらに汗をかいて、声が少し浮つく。話しかけなかったら、そこから何か月も、相手のストーリーズが流れてくるたび、会社の飲み会で相手を見かけるたびに、心のどこかがもやっとする。頭が怖がってるのはその30秒のほうだから、毎回話しかけないほうを選んで、しかも自分は冷静だと思ってる。何か月も続くもやもやは、そもそも計算に入ってない。
だからここでは「怖がるな」とは言わない。正直、「考えすぎるな、勇気を出せ」が効くなら、とっくにできてるはずだ。まずこの計算をはっきりさせて、それからすごく小さいところから始めるお願いのはしごを渡す。ノーと言われても実はけっこう平気だということを、自分の目で確かめてほしい。
なぜこんなに断られるのが怖いのか。感情の計算は2か所で間違ってる
断られる痛みを大きく見積もりすぎてる。心理学者のダニエル・ギルバート、ティモシー・ウィルソンらは1998年に一連の「感情予測」の研究を行った。悪いことが起きたあと、自分がどれくらい長く落ち込むかを予測してもらう研究で、失恋、就職の選考で落とされる、選挙で負けるといった場面が使われた。結果、みんな落ち込む期間を長く見積もりすぎていた。自分が悪いことを少しずつ消化するのがかなり得意だということを、人はあまり考えないからだ。話しかける前に想像するのは、相手にあきれた顔をされて、1週間ずっと恥ずかしい思いをすること。実際によくあるのは「ごめん、その日は用事がある」の一言で、10分くらい顔が熱くなって、夕飯はいつもどおり食べる。
「話しかけなかった」分を計算に入れてない。心理学者のトーマス・ギロビッチとヴィクトリア・メドヴェックは1995年に後悔の研究をまとめて、後悔には時間による法則があることを見つけた。短い期間では、人はやって失敗したことのほうを後悔する。何年かたって振り返ると、いちばん引きずっているのはむしろ、あのときやらなかったことだった。でも話しかける直前の1秒には、話しかけない代償は帳簿にまったく載ってない。まだ起きてないし、あとになっても目立って痛むわけじゃないから。
そこにループが加わる。「また今度」と言うたびに緊張がすっと消える。そのほっとした感じがごほうびのようになって、頭は「避けると効く」と覚える。次はもっと避けたくなる。
計算を並べてみると、ずっとはっきりする。
| 話しかけて、断られる | ずっと話しかけない | |
|---|---|---|
| どれくらい続くか | 数十秒から一晩 | 何か月も。もっと長いこともよくある |
| どれくらい痛いか | すごく激しい | すごくゆるい。ゆるすぎて気づかないくらい |
| 何が残るか | 結果がひとつ:今回、この人とは合わなかった | はてながひとつと、「自分はどうせ勇気がない」 |
| 頭の評価 | すごく怖い | まあ平気でしょ |
表の最後の行が問題だ。話しかけないほうが長く引きずるのに、頭は平気だと思ってる。この避けることの感情の帳簿は、無料レッスンの話しかける怖さと、長く続く後悔で、場面を使って一通り練習できる。
話しかける前の準備:断られるのはその1回だけ
断られたとき、相手がノーと言ったのは今回のお願いに対してで、このタイミングでの話だ。相手はあなたという人間全体に点数をつけてるわけじゃない。
相手はまだあなたを知らない。あなたの仕事も、過去も、どんな人かも知らないから、あなたの価値なんて評価できない。勧誘だと思われてることさえある。だから一度の「ノー」を「自分という人間はだめだ」にまで広げないこと。逆側もはっきり分けておく。相手が迷ってるだけで、まだ話を続けてくれてるなら、何が気になるのか聞いてみていい。相手が「嫌です」と言った、首を振って離れていった、なら、それはノー。崩す方法を探さなくていい。理由は迷っているのは同意じゃないに書いてある。レッスンの1回の「ノー」で自分は否定されないは、この両方を練習するものだ。
話しかける前にもうひとつ使える考え方がある。心の中で相手を、道ですれ違うただの誰かだと思っておく。相手は自分が誰かを決められない。そう考えると緊張がかなり小さくなる。実際に話しかけるときのやり方は真剣に。相手を見て、相手の言うことを聞いて、相手の話につなげて話す。
練習の前に毎回30秒、スマホのメモに2行書く。
- 予想:相手は__するだろう。自分は__点落ち込む(0〜10)
- 実際:相手は__した。自分は__点落ち込んで、__続いた
この2行を甘く見ないでほしい。練習全体でいちばん効くのがこれだ。不安を研究するミシェル・クラスクらは2014年の曝露療法についてのまとめで、曝露の練習をより効かせる方法をいくつか挙げていて、その最初が「予想がくつがえされること」だった。何が起きるのが怖いのかを先にはっきり言っておいて、実際の結果と比べる。不安症の治療の話だけど、やり方はここでの練習によく似てる。書いておかないと、頭はすぐに予想を「最初から大丈夫だとわかってた」に書き換えて、その1回の経験がむだになる。
断られる練習:5段階のお願いのはしご
小さなお願いをあえてするこの練習は、曝露練習と呼ばれてる。まず3つのルール。これは自分と相手の両方を守るためのものだ。
- どのお願いも、相手がノーと言いやすいものにする。練習するのは自分がノーに向き合うことで、相手の我慢強さを練習台にしない。
- 急いでいる人、忙しい人、気軽にその場を離れられない人は選ばない。
- ノーと言われたらすぐ引く。理由を問いただしたり、言い方を変えてもう一度頼んだりしない。
各段階をだいたい2、3回やって、怖さの点数がはっきり下がってから上に進む。ある段階で一日中落ち込むなら、ひとつ下に戻っていい。
1段目:知り合いに本当の好みを言う
友達とごはんに行くときに言う。「今日はマックじゃなくて焼き鳥がいい」。小さなことに聞こえるけど、これすら「どこでもいい」と言うのが癖になってる人は多い。ノーと言われる確率は低いけど、ひとつ練習になることがある。自分が欲しいものを口に出すことだ。
よくある失敗:言った直後に「でも、ほかがいいならそれでもいいけど」と付け足すこと。相手が答える前に、自分で引っ込めてしまってる。
2段目:店で、断られるかもしれない小さなお願いをする
お祭りの屋台で「たこ焼き、半分の量でお願い」と言う。本屋で「イベントが終わったら、このポスターをもらって帰りたい」と言う。相手はいいよと言うかもしれないし、無理と言うかもしれない。どちらもごく普通のことだ。
よくある失敗:ノーと言われたあと、3回すみませんと言って逃げること。練習するのは「わかりました、ありがとう」と言って、いつもどおり買い物を済ませることだ。
3段目:知らない人に、本当に知りたいことを聞く
屋台の列で前の人に聞く。「ここ、並ぶ価値ありますか?」。駅で聞く。「美術館って、この出口で合ってますか?」。大事なのは、本当に知りたいことを聞くこと。それと、相手が答え終わったらすぐ離れられること。
よくある失敗:知らない人を練習の道具にして、わざと変な質問をして反応を見ること。ネットで見かける「断られチャレンジ」みたいな遊び方は勧めない。自分の練習を、人の迷惑にしちゃいけない。
4段目:友達や同僚を自分から誘う
「金曜の仕事終わり、新しくできたラーメン屋に行こう」。これが、本当に断られるかもしれなくて、自分も答えを気にする最初のお願いだ。「無理なら全然いいけど」は付け足さなくていい。相手がノーと言ったら「了解」と返して、口調を変えない。それで相手は、あなたを断っても気まずくないとわかる。
よくある失敗:「みんな来るから」と包んで、相手が断りにくいようにすること。あるいは、今週は無理と言われて、嫌われてると決めつけること。今週無理なのは、今週無理なだけだ。
5段目:好意のある人を、具体的に誘う
日時、場所、何をするかをはっきり言う。これを具体的な誘いと呼ぶ。言ったら黙って、相手の答えを待つ。
誘いははっきり言って、断られたら落ち着いて受け取る。理由は聞かないし、「なんとなく聞いただけ」とも言い直さない。断っても気まずくないとわかってもらえれば、次にいいよと言ってもらえる可能性が上がる。
よくある失敗:断られたあとに「なんで?」と問いただす。あるいは急いで「なんとなく聞いただけだから」と言い直す。前者は相手に説明を求めてるし、後者は自分の逃げ道を作ってて、さっきの誘いが本気じゃなかったことになる。断られたときの返し方に、そのまま使える返し方がもっとある。
このはしごは、レッスンの小さく断られてみるチャレンジと一緒に使える。はしごを上りきったら、次は道で知り合いたい人を見かけたら、そのまま話しかけることだ。声のかけ方の基本に一通りの手順がある。
練習が効いてるかどうか、どうわかる?
- 「予想」と「実際」の2行の差がどんどんはっきりして、自分がいつも悪く予想しすぎてると気づき始める。
- ノーと言われたあと、立ち直るまでの時間が短くなる。
- 断られたことを話すとき、「自分はどうせ」と言わずに「今回は」と言うようになる。
- ノーと言われる回数が減らない。むしろ増える。
最後のは後退に見えるけど、実はいいことだ。断られる回数が増えたのは、話しかける回数が増えたからだ。
話しかける瞬間は、どれだけ練習してもやっぱり緊張する。変わるのは、緊張していても自分は話しかけられると知っていることだ。これを緊張していいと呼んでる。ここをもっと練習したいなら、自然体の自信のつけ方を見てほしい。心の持ち方に関するほかの記事は、全部マインドセットのページにある。
「断られる怖さを克服する」アドバイスのうち、飛ばしていいもの
- 「100回断られれば怖くなくなる」回数だけではあまり足りない。予想も書かず、結果も振り返らないなら、100回断られても100回恥ずかしい思いをためるだけかもしれない。それに、通行人を道具にしやすい。
- 「解説を全部読んで、最初の一言を暗記してから出かけよう」読めば読むほど動けなくなるし、覚えたセリフは途中でさえぎられると続かない。今日はしごの1段目をやるほうが、解説をあと10本読むより効く。
- 「相手に断るチャンスを与えるな」これは半分だけ正しい。迷いのない口調で誘うのは問題ない。相手が迷っていて、たとえば「でもこのあと用事があるんだよね」と言うなら、まだ断られたわけじゃない。何が気になるのか聞くか、筋の通った理由をひとつ出せばいい。「じゃあコーヒー1杯だけ、30分。急いでたら先に帰っていいから」。相手が「嫌です」と言った、首を振った、背を向けて離れていった、なら、それは断り。そこで引く。言い方を変えて何度も頼んで、いいよと言わせるのは、プレッシャーをかけてることになる。追い詰めて引き出した「いいよ」は、たいてい相手が気まずい場を早く終わらせたかっただけだ。
- 「断られたら、相手に見る目がないだけ」そう考えれば面子は保てる。でも今回から何かを学ぶ機会もなくなる。相手がその気じゃないのは相手の選択で、相手を悪く言わなくても自分は楽になれる。
セルフチェック:この計算をどうするか3問
1. 同僚をランチに誘いたいけど、断られるのがすごく怖い。事実にいちばん近い考えは?
2. 屋台で半分の量を頼んだら、やってないと言われた。いちばんいい反応は?
3. 「断られる練習」のやり方として、いいのはどれ?
よくある質問
断られるのがすごく怖いのは、心に問題があるから?
ほとんどの場合そうじゃない。断られるのが怖いのは、とてもよくある感覚だ。ただ、拒絶に特に敏感な人はいる。心理学者のジェラルディン・ダウニーとスコット・フェルドマンは1996年に拒絶への敏感さと親密な関係の研究を発表していて、こういう人はいつも拒絶を予想していて、相手の意味のはっきりしない行動を、わざと冷たくされたと受け取りやすいことがわかった。用語集ではこれを拒絶への敏感さと呼んでる。怖さのせいで長い間ほとんどの人付き合いの場を避けている、仕事や学校に影響が出ている、という場合は、社交不安かもしれない。心療内科の医師やカウンセラーに相談してみてほしい。治療できるものだ。
話しかけられない、断られるのが怖いのは、相手を気にしすぎてるってこと?
そうかもしれない。気にしている人ほど、相手の反応が自分への採点みたいに感じられる。これは恋愛で重いと言われる理由と同じ話だ。いちばん直接的な解決策は、もっといろんな人と知り合うこと。選択肢が増えれば、ひとりの答えがそれほど重くなくなる。相手が答えているのはこの誘いに対してで、あなたという人間を評価できるわけじゃないことも覚えておいてほしい。好きな人に自分は釣り合わないとよく感じるなら、好きな人に釣り合わない気がするときはのほうがぴったりくる。
告白する前に、断られるのがすごく怖いときは?
まず告白を最初の一歩にしないこと。先に会う約束をして、何回か会って、相手が自分から次につなげてくれるかを見る。ふたりがもう前に進んでいれば、正式な告白がいらないことも多い。ずっと誘わずに、1回の告白ですべてを決めようとするのが、いちばん断られやすい。いい感じの関係をどう読むか、いつはっきりさせるといいかは、友達以上恋人未満とはを見てほしい。
一度ひどい断られ方をして、もっと怖くなった。どうすれば?
はしごのいちばん下からやり直して、「なんともなかった」という経験を頭に何回か積ませる。断られたあとの数日をどう過ごすかは、断られてつらいときはに24時間のやり方がある。