ネットの挑戦リストは、だいたい両極端に分かれる。ひとつは派手なやつ。大通りに寝転ぶ、通行人に絶対貸してもらえないものを借りようとする、相手の反応を撮影する。その瞬間はスリルがあるけど、次の日も人の目は同じだけ怖い。もうひとつは安全なやつ。店員にドリンクを作り直してもらう、グループLINEで店を変えようと提案する。で、そこで止まる。1か月練習しても、好きな人の前ではやっぱり口が開かない。
このリストは生活の小さなことから始めて、7番目からは本当に近づいて人と知り合いに行く。男女どちらでも練習できるから、以下はだいたい「相手」と書く。
始める前の3つのルール
- 毎日少しずつ、数を決める。初心者なら1回の外出で2、3個で十分。できたら翌週ひとつ増やす。月に1回しか動かず、断られたら帰る、では練習にならない。いきなり50個と決めて1個もやらないのも同じ。
- やる前に数字をひとつ、やったあとに3行書く。やる前は「どれくらいしんどいと思うか」を0〜10で。やったあとは「何をしたか」「相手がどう返したか」「どこが運だったか(相手が急いでいた、雨だった、周りがうるさかった)」。
- 相手が嫌だと言ったらやめる。そっけない、一瞬固まる、はよくあること。もう一言言っていい。でも相手が「結構です」と言ったり、早足で離れていったりしたら、笑って「じゃあね」で終わり。
10の小さな挑戦:日常から、話しかけて知り合うまで
1. 周りより少し大きな声で、少しゆっくり話す
注文するとき、会議、同僚と話すとき、いつもより少し大きな声で、少しゆっくり話す。一文言ったら一拍置く。緊張すると声が小さく早口になって、相手に「え?」と何度も聞き返され、ますます焦る人は多い。どうでもいい場面で声を安定させておけば、知り合いたい人に話しかけるときに声から震えたりしない。
一言の振り返り:今日、聞き返された回数は?
2. 見られたら、見返す
電車の中、エレベーター、列に並んでいるとき。誰かと目が合ったら、すぐそらさずに見返す。相手が先にそらすか、軽く笑うまで待つ。デートのときだけ無理に相手を見ようとして、一晩中ぎこちなく見つめてしまう人は多い。普段から練習しておくと、目線が落ち着く。
一言の振り返り:今日は何回目が合った?どっちが先にそらした?
3. 「どこでもいい」と言わずに、行きたい店を言う
友達がまた同じ店を提案してきた。4回目だ。今回は「どこでもいいよ」じゃなくて、「今回はあのフォーの店にしよう メニュー貼るね」と送って、地図のリンクもつける。具体的な提案は、みんな「いいね」も「やめとく」も言いやすい。欲しいものを口に出せるようになると、そのうち「行こう、一杯飲みに」も言えるようになる。
一言の振り返り:みんな乗ってくれた?乗ってくれなかったとして、何か悪いことは起きた?
4. 違っていたら、その場で言う
甘さ控えめで頼んだのに、来たのはのどが痛くなるほど甘い一杯。そのまま言う。「甘さ控えめで頼んだんですが、これは甘すぎるので作り直してください」
美容院でカットの途中に違うと思ったときも、その場で言う。「上はもう少し長めに残して、この写真みたいにしてください」。最後まで我慢して、笑顔で「ありがとうございました」と言って、家で落ち込む人は多い。後ろに並んでいる人にうざいと思われてる?実際はそうでもない。コーネル大学のトーマス・ギロビッチらはある実験で、学生に恥ずかしいTシャツを着て教室に入ってもらった。学生が予想した「気づいた人の数」は、実際に気づいた人よりずっと多かった。研究者はこれを「スポットライト効果」と呼んでる。周りの人はほとんどが通行人で、自分の生活で忙しい。
一言の振り返り:並んでいた人の中で、本当に反応した人はいた?
5. 行きたくないなら「今回はやめとく」と言う
同僚に仕事帰りのカラオケに誘われた。でも家に帰って寝転がりたい。「誘ってくれてありがとう。今回はやめとく」。予定をでっち上げなくていいし、2回謝らなくていい。やりたくないと言えるのと、欲しいものを言えるのは、同じ種類の自信から来てる。
一言の振り返り:相手の反応は、予想よりよかった?悪かった?
6. 店員や通りすがりの人に、一言多く話す
コーヒーを買うとき、ありがとうだけじゃなく、その場のことを一言足す。「今日すごく混んでますね。大変そう」。道を聞いたら、ついでにこの辺でおいしい店も聞いてみる。この段階で練習するのは、知らない人に口を開くその一瞬。相手が何を返してきてもいい。
一言の振り返り:相手は話に乗ってきた?あとでそのことをどれくらい考えてた?
7. 知り合いたい人を見かけたら、3秒以内に近づく
ここからが本番。道で、カフェで、本屋で知り合いたい人を見かけたら、心の中で1、2、3と数えて近づく。迷う時間が長いほど話しかけにくくなる。相手の後ろをずっとついて歩くと、相手は怖くなる。前か横から近づいて、後ろから呼び止めない。相手の目を見て、来た理由をそのまま言う。
「さっき見かけて、声をかけようと思って来た」
言ったら一拍置いて、相手の返事を待つ。今日の服が適当でも、そのまま行く。「今日はかなり適当な格好だけど、見かけたからやっぱり声をかけに来た」
一言の振り返り:見かけてから近づくまで、何秒迷った?
8. 相手がそっけなくても、もう一言
相手が固まる、勧誘だと思われる、「はあ」と流される。どれもよくある。慌てて説明しなくていい。いつもの話し方でもう一度言う。「勧誘じゃないよ。素敵だなと思って、知り合いたくて」。そして待つ。相手が立ち止まる、こっちを向く、笑う。そうなったら目の前のことを話せばいい。止まらずに歩き続けるなら、それで終わり。追わない。
一言の振り返り:相手の最初の反応は?もう一言言ったあと、変わった?
9. 話が弾んだら、LINEを交換する
2、3分話して、相手がこっちに質問してきたり笑ったりし始めたら、締めに入る。「LINE交換しよう。今度コーヒーに誘う」。急いでいると言われたら、「引き止めないよ。交換したら行くから」。交換したら名前を名乗って、じゃあねと言って、さっと離れる。ぐずぐず残らない。
一言の振り返り:いちばん盛り上がっているときに締めた?それとも冷めるまで話してた?
10. すごく話が合ったら、その場で誘う
相手が買い物中で、ひとりで、このあと予定がないと言っていて、話もスムーズなら、家に帰ってからゆっくり誘わなくていい。「ひとりなら、隣のカフェで30分お茶しよう」。言ったら黙って、相手の答えを待つ。今日は無理と言われたら、LINEを交換して別の日に誘う。嫌だと言われたら、じゃあねと言う。
この段階がいちばん難しい。答えを気にしてしまうから。断られたときは思い出してほしい。相手はまだあなたを知らない。断ったのはこの1回の誘いで、あなたという人間を評価できるわけじゃない。お願いのはしごの全体と、断られたあとの引き方は、断られるのが怖いときはに一段ずつ書いてある。道で話しかけるときの細かいところは声のかけ方の基本を見てほしい。
一言の振り返り:口に出せた?相手はどう返した?
振り返りは3行だけ
短いほどいい。こんな感じ。「予想8点、実際3点。相手は勧誘だと思ったけど、もう一言言ったら笑った。あの通りはチラシ配りが多かったから、そこは運」
予想と実際の差が、この練習のいちばんの中身。不安を研究している心理学者ミシェル・クラスクらは2014年の曝露療法についてのまとめで、怖さがいちばんよく下がるのは、自分が予想していた悪い結果が、実際に起きたことでくつがえされたときだと書いてる。不安症の治療の話だけど、理屈は同じ。先に予想を書いておかないと、あとで記憶がこっそり「最初から大丈夫だとわかってた」に書き換わって、その1回がむだになる。用語集では、怖いことにあえて向かっていくこの練習を曝露練習、書き留める数行を振り返りと呼んでる。
3行目の「どこが運だったか」は書き忘れる人が多い。相手がたまたま電話中だった、選んだ時間帯はみんな急いでいた。こういうのはあなたと関係ない。そこを分けておくと、残りが次に直せるところになる。
自信はたいてい、やったあとに出てくる。話しかけてみたら、なんとかなった。それが証拠になる。「自信がついたらやる」と言っていると、その日はなかなか来ない。レッスンの動いてから、調子が出てくるはまさにこの順番の話で、小さく断られてみるチャレンジでは最初の小さなお願いを一緒にやってみる。
21日チャレンジにする
だから魔法の日数はない。21日というのは、本物の証拠をいくつか集めるのにちょうど足りて、最後までやりきれる短さ、というだけ。
- 1〜7日目:挑戦1〜6を、毎日1つか2つ。同じのを繰り返してもいい。
- 8〜14日目:1〜6は続けつつ、2回外に出て、それぞれ挑戦7と8を2、3回ずつ。
- 15〜21日目:外出のたびに2、3回。話が弾んだら9と10もやる。
- 毎日:自分が楽しいだけの小さなことをひとつ。誰も見ていなくてもやりたいこと。散歩、本を1章読む、ずっと覚えたかった料理を作る。
「毎日ひとつ自分のためのことをして、1回口を開く」。これが無料レッスン21日セルフチャレンジで練習すること。ひどい日があっても自分を責めなくていい。次の日に少し簡単なのを選べばいい。1日抜けても、最初からやり直さなくていい。
こういう挑戦は飛ばしていい
本当にやりたいこと。行きたい店を言う、知り合いたい人に近づいて話しかける。
動画映えする変な挑戦。大通りに寝転ぶ、電車で腕立て伏せ、通行人に貸してもらえるはずのないものを借りる。
毎日2、3個と決めて、やったら3行書く。翌週ひとつ増やす。
1日100人に突撃して、誰が誰だか覚えていない。どこがまずかったのかもわからない。
スマホのメモに3行。自分の姿勢を見たいなら、撮るのは自分だけ。
相手の反応を撮る。相手の写真や会話を人に見せる。
笑って、じゃあねと言う。
後ろからついて行って話し続け、「粘る練習」だと言う。
今日外に出て、ひとつやる。
家で解説を見て、最初の一言をストックして、準備ができたらやる。
変な挑戦で練習できるのは演技だけ。やった直後は熱くなるけど、次の日も人の目の気になり方はまったく変わってない。回数だけ稼いで振り返らないと、3か月後も同じ失敗をしてる。相手を撮る、相手を追いかけるのは、練習の範囲を超えてる。線を越えてる。
一歩ごとに長く考え込んでしまうタイプなら、考えすぎて動けないときはに、やっと一歩を踏み出した人の話がある。緊張そのものをどうにかしたいなら自然体の自信のつけ方を。ほかの記事はマインドセットのページにまとめてある。
セルフチェック:練習のしかたがわかってるか3問
1. 道で知り合いたい人を見かけて、「無視されたらどうしよう」と考え始めた。次は?
2. 挑戦の前に、予想するしんどさを数字で書いておくのはなぜ?
3. いちばん効く練習はどれ?
よくある質問
内向的な人でもこの挑戦はできる?
できる。まずはあいさつのいらないものから始めればいい。少し大きな声で話す、目が合ったら見返す、誘いをひとつ断る。内向的というのは、どこでエネルギーを充電するかの話で、話しかける勇気とはあまり関係ない。7番目以降は、1回の外出で2、3回やったら早めに帰ってかまわない。
断られる練習って何?
わざと「ノー」と言われるかもしれないことをして、ノーと言われても自分は大丈夫だと体に覚えさせること。恋愛にいちばん効くのは、本当に知り合いたい人に話しかけるバージョン。バズるような、わざとばかげたお願いをする遊び方は、演技がうまくなるだけ。
人付き合いの自信を早くつけるには?
一晩で効く方法はない。でも長く待つ必要もない。毎日少しずつ、何週間か続ければ、「話しかける」ことの重さは心の中で軽くなっていく。自信は1回ずつの証拠が積み重なってできるもの。だからいちばん早い道は小さな挑戦をたくさんすることで、1回の超大型の挑戦はあまり役に立たない。
挑戦がひどい結果に終わったら?
起きたことをそのまま書いて、自分で直せるところと運だったところを分ける。そして1つ前の段階に戻って何日かやる。1回ひどかったのは、記録が1行増えただけ。頭の中で何度も再生してしまうなら、断られてつらいときはにその日を乗り切るやり方がある。