「アルファになれ、ベータになるな」「高価値な男は説明しない、謝らない、追わない」。こういう言葉は、ショート動画にも、ネット掲示板のコメントにも、ジムの更衣室にもあふれています。
ネットでいうアルファ男(アルファオスとも言います)は、男のランキングのいちばん上にいる人のことです。強気で、人を従わせ、お金も体もあって、女性のほうから寄ってくる。ベータ男はその反対で、まじめで従順、よく「都合のいい人」扱いされる人として描かれます。「高価値男性」はその上位版で、年収、見た目、身長を点数に換算します。
この絵には当たっている部分もあります。人は確かに強い人に惹かれます。でもこの絵は、強さを男同士の順位と支配、年収と身長の点数として描いています。二人のあいだで強さといえば、あなたの状態のことです。彼女の前で慌てるか、機嫌を取るか、自分で決められるか。どんなに条件がよくても、彼女の前で言いなりになっていれば見下されます。条件は普通でも、落ち着いて自然体でいる人には、彼女のほうが興味を持ちます。
アルファ男という言葉はどこから来た?オオカミの研究者まで訂正した
「アルファ」という言葉は、もともとオオカミについて使われていました。1940年代、スイスの動物学者ルドルフ・シェンケルが飼育下のオオカミを観察しました。血のつながりのない大人のオオカミが同じ囲いに入れられていて、順位をめぐってよくケンカをしていました。研究者は、いちばん上の順位を勝ち取った個体をアルファと呼びました。1970年には、よく売れたオオカミの本がこの考え方を一般に広めました。
のちに、その本を書いた生物学者デイヴィッド・メックは、カナダ北極圏の島で野生のオオカミの群れを13回の夏にわたって観察し、野生の群れはたいてい一つの家族で、いわゆる「リーダー」は親だということを見つけました。親が先頭に立つのは親だからで、ケンカの勝ち負けとは関係ありません。メックはその後長い時間をかけて、この考え方を公に訂正し、出版社にその本の重版をやめてほしいとまで頼みました。
つまり、ネットで語られる「アルファは支配で地位を手に入れる」という絵は、とても不自然でストレスの大きい飼育環境から来ています。仮にオオカミの群れが本当にそうだったとしても、人間はオオカミではありません。
なぜこんなに多くの男性がアルファとベータを信じるのか
わかりやすいうえに、登れそうに見えるはしごを用意してくれるからです。
「なぜデートに誘えないのかわからない」は、ぼんやりしていてつらい不安です。「自分はベータすぎる、アルファにならなきゃ」と考えると、それがすぐにチェックリストに変わります。胸筋を鍛える、車を変える、話すときに笑わない、返信を減らす。リストがあると、救いがある気がします。
この考え方の半分は本当です。女性は確かに強い男性に惹かれるし、自分のない機嫌取りは確かに魅力がありません。問題は、強さを支配や見せびらかしと取り違え、機嫌を取らないことを無関心のふりと取り違えていることです。リストどおりに演じた強さは、彼女がわざと少し意地悪をしてみただけで崩れます。
あまり語られない代償もあります。順位で支えている自信は、自分より上の人に会うと崩れます。車がもっといい人、年収がもっと高い人、もっと体の大きい人は必ずいます。順位で決まる自信の無料レッスンが扱っているのは、まさにこのことです。それに、順位で世界を見ると、周りの男性は全員ライバルに、女性は全員審査員になり、普通の夕食さえ試験のように感じられます。比べることにもう疲れているなら、人と比べてしまうのはなぜ?に具体的なほどき方があります。
高価値男性とは?ネット版と、相手が実際に感じること
ネットで教えられる「高価値な行動」と、向かいに座っている人が実際に感じることは、ずれていることがよくあります。
| ネットで「高価値」と言われること | 相手が実際に感じること |
|---|---|
| 口を開けば年収、車、高級時計の話 | この人は私に認めてほしくてたまらない |
| 絶対に謝らない。「謝るのはベータ」 | この人は失敗しても責任を取らない |
| 何でも自分の言うとおりにさせ、聞かないと怒る | 支配されている。離れたい |
| 本当は気になっているのに、わざと返信を遅らせ、無関心を装う | 演技だと一目でわかる。少し試すとすぐ崩れる |
| 店員に横柄にふるまって「オーラを見せる」 | とてもわかりやすい危険信号 |
| 少しでも緊張してはいけないと無理をする | 硬い。役を演じているみたい |
いちばん上の行には名前があって、高価値のパラドックスと呼ばれます。自分の価値を見せようと力むほど、相手には認めてほしがっているように見える。証明し続けることで伝わるのは、「自分が十分かどうか自信がない」ということです。高価値のパラドックスのレッスンでは、いくつかの会話を通して、話をシェアすることと自慢することの違いをはっきり見られます。
彼女があなたに魅力を感じるきっかけは、たいてい静かなものです。話し方が急いでいない、目をそらさない、誘いたいときはそのまま誘う、彼女に少し意地悪をされても慌てない、断られても怒らない、店員にも丁寧。
女性が強い男性に惹かれるとき、何に惹かれているのか
ネットのアルファ論にも、一つ外れていない点があります。女性は強い男性に惹かれる、ということです。これは私たちの見方で、惹かれ方についての研究は結果がまちまちです。でも身近なカップルをいくつか見れば、彼女が見ている強さが、財産や順位とあまり関係がないことに気づくはずです。
強さは2種類に分けられます。一つは条件です。年収、顔、身長、体つき。これは彼女がもう一度こちらを見てくれる理由になる、いわば入場券です。もう一つは、彼女の前でのあなたの姿です。彼女が機嫌を損ねたとき慌てるか、彼女に直してと言われてすぐ直すか、欲しいものをそのまま言えるか、彼女を失うのが怖いか。会社ではいばっている社長でも、好きな女性の前では何でも言いなりで顔色をうかがっていれば、やはり見下されます。条件は普通でも、一緒にいて落ち着いていて、自分で決められる人には、彼女のほうが「この人、何かある」と感じます。
だからアルファのチェックリストは、鍛える場所を間違えています。胸筋や車で補えるのは条件だけです。彼女が感じ取っているのは、一緒にいるときにあなたが落ち着いているか、彼女に振り回されないかです。この強さに、人を押さえつけることは必要ありません。人を下げないと高く見えない人は、実は心の中に自信がありません。
落ち着きとは、自分を保つこと
「アルファ」を取り除いたあとに残る役に立つものを、ここでは「落ち着き」と呼びます。見るのは、気持ちや話し方が安定しているか、何か起きたときに慌てないかです。周りが自分に従うかどうかは、その次の話です。
日常の場面をいくつか見てみましょう。
笑って流す。本当に嫌なら、その場で落ち着いて「その冗談は好きじゃない」と言う
もっときつく言い返す。あるいはむすっとして場を凍らせる
「自分は違う見方で、結末が急すぎると思った」。それでも反対なら、笑って「まあ、好みはそれぞれだね」
彼女が折れるまで言い負かす
「わかった。はっきり言ってくれてありがとう。あの日は楽しかった」。そして本当に手放す
「別に。そっちの損だよ」と返す。あるいは理由を求めて3通続けて送る
演技の自信の無料レッスンでは、「うまくいくために装った自信」とリラックスした落ち着きを並べて見ます。レッドピルの世界観がどうやって支配を魅力と言い換えるのかは、レッドピルとはでくわしく分解しています。
アルファを目指すより、毎日この3つを練習する
- 毎日1回、本当の好みを口にする。昼に何を食べたいか、週末に何をしたいか。そのまま言い、反対されてもすぐには引っ込めず、相手に無理に賛成させることもしない。
- 疑われたら、まず2秒止まる。胸がきゅっとしていないか、急いで言い訳や反撃をしようとしていないかに気づいて、それからいつもの口調で答える。この2秒が、落ち着きの練習場です。
- 自分より上の人を、本気でほめる。ジムで自分より鍛えている人、仕事で自分より上手な人。これができるなら、自信は順位に縛られていません。
これで一晩のうちに「高価値男性」になれるわけではありません。でも彼女の前で慌てにくく、機嫌を取りにくくなります。彼女が感じ取る強さはそこです。緊張しやすいところから始めたいなら、自信をつけるにはを読んでみてください。魅力として包装された支配の話は、ほかにも危険信号のトピックページにまとめています。
セルフチェック:落ち着きと支配を見分けられるか3問
1. デートで、彼女があなたの映画の感想に反対した。より落ち着いた反応は?
2. ネットでは「絶対に謝らないのが高価値」と言われる。向かいに座っている人が感じやすいのは?
3. 「アルファのオオカミはケンカに勝ってリーダーになる」という話は、その後どうなった?
よくある質問
ベータ男とはどういう意味?
ネットの男性コミュニティでの使い方では、まじめで従順で、よく都合のいい人扱いされる男性のことを指し、たいてい見下すニュアンスがあります。この分け方自体に問題があります。穏やかさや思いやりと、自分がないことを一緒くたにしているからです。穏やかなのは欠点ではありません。直したほうがいいのは、何でも機嫌を取って、自分の意見や境界線を持たないところです。
アルファ男の特徴は本当にある?
アルファやシグマといった呼び名は、会話のときに便利なラベルにすぎません。自分は一匹狼タイプだと思ってシグマと名乗るのはかまいません。でもラベルをまねしても、身につくのは殻だけです。人を惹きつける特徴、たとえば落ち着いている、決められる、機嫌を取らない、言ったことをやる、といったものは、誰でも少しずつ練習できます。人を押さえつけることとは関係ありません。
女性はみんな強引な男性が好き?
多くの女性は強い男性に惹かれます。ただ、彼女が見ている強さは一緒にいるときのあなたの状態です。落ち着いている、決められる、自分で選べる、彼女を失うのを怖がらない。人に命令すること、人に怖がられることとはまったく別のものです。
「高価値男性」になりたい。どこから始めればいい?
まず「価値」を、見せるものからやるものに変えましょう。自分の生活をちゃんと回す、言ったことをやる、彼女の前で機嫌を取らない、欲しいものはそのまま言う、断られたらきれいに引く、誰にでも丁寧にする。どれも車や家を持っていなくても今日から始められて、相手は一緒にいる中でそれを感じ取ります。