ここからは架空の物語で、よくある場面をいくつかつなぎ合わせたものだ。主人公はヒナ。まず話を最後まで書いて、それから転機をひとつずつ分けて見ていく。そのとき心の中で何が起きていたのか、別のやり方をしたらどうなったのか。主人公は女性だけど、寂しさから妥協してしまうのに男女は関係ない。
ヒナの3年間:ある架空の物語
1年目:いちばんしんどいのは日曜の夜
ヒナは28歳で、マーケティングの仕事をしてる。半年前に4年付き合った人と別れた。平日はまだいい。忙しくて考えるひまがない。いちばんきついのは日曜の夜だ。洗濯は終わって、近所で買った惣菜も食べ終わって、部屋は冷蔵庫の音が聞こえるくらい静か。インスタでは大学の同級生がウェディングフォトを撮っていて、LINEのグループでは誰かの赤ちゃんのお宮参りの話をしてる。お正月に実家へ帰ると、おばあちゃんに手をにぎられて「あんたも早くいい人見つけなさいね」と言われた。
そのころ、マッチングアプリでケンジと知り合った。ケンジは悪い人じゃない。仕事は安定していて、毎日朝と夜にメッセージをくれて、3回目に会ったときには真剣に付き合いたいと言ってきた。ヒナは彼にときめきを感じなかった。話していても、話題を探すのはいつも自分のほうで、彼はあまり彼女のことを聞いてこないし、彼女の好きなインディーズバンドにも興味がない。それでも彼女はこう思った。「少なくとも週末は誰かがいる。気持ちはあとから育つかもしれないし」
彼女はOKした。その夜、いつになくよく眠れた。
2年目:ふたりでいても、やっぱり静か
気持ちは育たなかった。ふたりはほとんどケンカをしなかったけど、話すこともだんだん減っていった。週末はいつもネットフリックスを見て、デリバリーを頼む。ケンジは出かけるのが好きじゃなくて、彼女の友達にもあまり会いたがらない。それで彼女も、だんだん友達と会わなくなった。毎週火曜のダンス教室も、ケンジに「仕事のあとに踊りに行くの、疲れない?」と言われて、それもそうかと思ってやめた。
あるとき電車の中でとても笑える投稿を見つけて、最初に送りたいと思ったのは大学のときのルームメイトだった。ケンジじゃなかった。彼女は一瞬かたまって、スマホをしまった。
友達に最近どうと聞かれると、「うん、悪くないよ。すごく安定してる」と答えた。これはうそじゃない。ただ、安定しているものが、自分のほしいものとは限らなかった。別れようと思ったこともある。でもそのたびに、同じ考えの列に押し戻された。もう2年だし、私ももう30だし、次の人のほうがいいとは限らないし、彼は何も悪いことしてないし。
3年目:先に口を開いたのはケンジだった
ある晩、ケンジがスマホを置いて、彼女に聞いた。
別れてから最初の日曜の夜も、部屋は同じように静かだった。彼女は気づいた。この静けさは、3年前とほとんど変わらない。違うのは、今回は急いで逃げなかったことだけだった。
転機1:彼女がよけたのは日曜の夜で、独りでいることとは別物だった
1年目をふり返ると、ヒナがOKしたのは本当は「もう日曜の夜をひとりで過ごさなくていい」ということで、ケンジのことは二の次だった。
これはよくある感情の計算で、しかも間違えやすい。ひとりの寂しさは短くて激しい。その何晩かはつらくて、つらさがはっきりしてる。妥協の代償は長くてゆるやかだ。痛くはない。少しずつ静かになっていくだけで、静かすぎて気づかないくらいだ。頭は激しいほうをひどく怖がるから、長く続くもやもやを、目の前の痛くない状態とためらわずに引き換えてしまう。言い出す怖さと、長く続く後悔の無料レッスンは、この計算を表に出してやり直す練習だ。
問題は、あの夜いつになくよく眠れたことにある。ほっとした感じはごほうびみたいなもので、頭は「この選択は正しかった」と覚えてしまう。でもあの軽さは怖さが消えたから来たもので、好きな人に出会ったこととは関係がない。
これには研究の裏づけもある。トロント大学のステファニー・スピールマンらは2013年に一連の研究を発表した。論文のタイトルはそのまま「独りでいるのが怖くて妥協する」というものだ。独りでいるのが怖い人ほど、あまり気持ちを向けてくれない、自分をあまり大事にしない相手にも同じように興味を持つことがわかった。すでに満足していない関係にいる人は、自分から別れを切り出すことも少なかった。おもしろいのは、こういう人が口で言う相手選びの基準は特に低くなかったことだ。実際に誰かと出会ったときに、基準がこっそり下がっていた。
ひとりの寂しさは激しく来るけど、少しずつ引いていく。妥協のもやもやは最初ほとんど感じないのに、1年ごとに積み上がっていく。
誰かでその穴を埋めるのは、気分が落ちたときにずっとスマホを見たり、カートに物を入れ続けたりするのとよく似てる。毎回少しの間だけ埋まって、また空っぽになって、次はもっと量が要る。このパターンは外からの刺激のランニングマシンの無料レッスンで全部分けて説明してる。
転機2:ふたりでいる孤独は、なぜ気づきにくいのか
2年目のヒナの孤独は、独りだったときより気づきにくかった。理由は3つある。
ひとりでも孤独とは限らないし、ふたりでも孤独になりうる。心理学でよく使われる孤独の定義は、「ほしいつながり」と「実際にあるつながり」の差だ。だから隣に誰かいても、すごく孤独になれる。電車で最初に思い浮かんだのがルームメイトだったのは、その差が顔を出した瞬間だった。
ゆっくりした感覚は警報を鳴らさない。「悪くないよ、すごく安定してる」もうそじゃなかった。あのもやもやは、本当に動きたくなるほどは痛くない。人はたいてい激しい感情に押されて変わる。ぬるい不満に押されて動くことはあまりない。
つぎこんだ分だけ、引き返しにくくなる。「もう2年だし」はサンクコストだ。もう使った時間のせいで、離れるのがもったいなく感じる。でもその2年は、残ったからといって元が取れるわけじゃない。もう1年が上に積まれるだけだ。
もうひとつ、孤独を重くしたことがある。彼女の生活が小さくなっていったことだ。友達と会わなくなり、ダンス教室もやめた。「自分は自分だ」と思わせてくれるものがひとつずつしまわれていって、孤独もそれにつれて大きくなった。
転機3:妥協の代償は、相手も払っている
この物語で、ケンジは悪い人じゃない。彼が手にしたのは、そばにいるけど心はここにない恋人で、しかもあのひとことを聞く勇気が出るまでに長い時間がかかった。
妥協はよく「自分ががまんすること」と言われるけど、もうひとりにもがまんさせてる。あなたが口に出さない「本当はそんなに好きじゃない」を、相手は何年もかけて感じとって、自分が足りないのかと疑う。だから「とりあえず付き合ってみる」で自分を説得して、興味の持てない人にOKを出すのはすすめない。それは相手を痛み止めとして使うことで、しかも相手はそれを知らない。
ヒナがダンス教室をやめて友達と会わなくなったのは、関係のために尽くしているように見えて、実際には自分を少しずつ消していた。相手の隣にいる人はどんどん彼女らしくなくなっていくし、相手は「彼女の生活は全部自分中心に回ってる」という重さまで背負うことになる。尽くしすぎて自分がいなくなるの無料レッスンは、まさにこのことを扱ってる。
「気持ちはあとから育つ」は半分だけ正しい
この言葉はよく自分を説得するのに使われるけど、全部間違いというわけでもない。もともとスロースターターの人は多くて、一緒に過ごすうちに好きになっていくこともある。
違いは、最初に種があるかどうかだ。その人に興味がある、一緒にいるとリラックスできる、もっと知りたいと思う。それなら気持ちは本当に育つ。でもいちばん大きい感覚が「ほっとした、やっとひとりじゃなくなった」なら、育つのは難しい。ほっとした感じは時間とともに薄れていって、時間とともに増えていくのは興味のほうだからだ。
| 気づくこと | ゆっくり好きになっている | 妥協している |
|---|---|---|
| 会う前に考えること | 「今日はどんな話をするんだろう」 | 「少なくとも今夜はひとりじゃない」 |
| 相手が自分の話をすると | もっと聞きたくなる | 話が終わるのを待ってる |
| 笑えることがあると | よく最初に相手を思い出す | 先に別の人を思い出す |
| 別れを考えると | この人と離れるのが惜しい | またひとりになるのが怖い |
| 数か月後 | もっとこの人を知りたくなる | どんどん静かになる |
別のやり方:最初の一歩はどう変えられるか
時間を1年目のあの日曜の夜に戻してみる。違う最初の一歩は、「寂しいときはデート禁止」でなくていい。まず寂しさを、生活に何かが足りないと教えてくれている合図として受けとる。付き合うまでのしめきりとして扱わない。
- 恋愛のことより先に、日曜の夜をなんとかする。いちばんしんどい時間帯に、決まった予定をひとつ入れる。友達とごはんを食べる、ダンス教室を続ける、河川敷を自転車で一周する。寂しさが少し満たされると、相手を見る目も少しはっきりする。寂しさが何の不足を知らせているのかは、寂しくて恋人がほしいときはで分けて見てる。ついでに出会いも増やしたいなら、サークルや習い事での出会い方に、毎週同じ人たちに会えるやり方がある。
- デートはそのまましていい。でも毎回、同じことを自分に聞く。「この人が好きなのか、ひとりじゃなくて済むのが好きなのか」。会ったあとに、相手の具体的に好きなところをひとつ書く。3回会っても書けないなら、答ははっきりしてる。
- しんどい夜を、あと何回か耐えるつもりでいる。ケンジに「ずっと考えてたんだけど、私たち合わないと思う」と言う代わりに払うのは、とてもつらい日曜の夜があと何回か増えることだ。その何晩かは過ぎていく。妥協のもやもやは、自然には過ぎていかない。
- もう妥協の関係の中にいるなら、決める前にまず生活を取り戻す。友達、趣味、ひとりの時間を、ひとつずつ拾い直す。ひとりがそれほど怖くなくなったとき、この関係に残したいものがあるかどうかが見えやすくなる。いい関係のサインと見比べてもいい。どう決めたとしても、相手にはそのまま伝える。冷たくして、相手に先に言わせるようなことはしない。
ヒナがこうしていたら、それでもケンジに出会っていたかもしれない。実は彼にちょっと興味があったと気づいたかもしれないし、気づかなかったかもしれない。違うのは、OKしてもしなくても、それがケンジという人のための判断になって、日曜の夜とは関係なくなることだ。
セルフチェック:好きなのか、寂しいのが怖いのか3問
1. 3回会ったのに、相手の具体的に好きなところをひとつも書けない。これは何を意味する?
2. いちばんしんどいのは日曜の夜。最初の一歩としていちばんいいのは?
3. とても静かな関係が2年続いていて、「もう2年だし、まあいいか」と思っている。もっといい考え方は?
最近やたらと「恋人いないの?」と聞かれるなら、恋人いるのと聞かれたらに気まずくならない返し方がある。こういうテーマはほかにもマインドセットのページにまとめてある。
よくある質問
寂しくないように付き合うのは、自分勝手?
自分勝手というより、すごく疲れている人が最初につかまれるものにつかまった、に近い。でも自分に気持ちがないとわかっていながら、相手には本気だと思わせているなら、相手は確かに代償を払ってる。早めに本当のことを言うほうが、引き延ばすよりいい。
相手が好きなのか、寂しいのが怖いだけなのか、どうすればわかる?
相手を、条件が同じくらいで同じように優しくしてくれる別の人に置きかえて想像してみる。「それでもいいかも」と思うなら、ほしいのは一緒にいてくれる誰かで、この人とは関係ないかもしれない。もうひとつのサインは、相手の具体的に好きなところを言えないことだ。
もう妥協の関係にいるなら、絶対に別れるべき?
そうとは限らない。まず自分の生活を取り戻して、ひとりがそれほど怖くなくなってから、この関係に本当に残したいものがあるか見ればいい。はっきり見えたら、どう決めたとしても、正直に、まっすぐ相手と話す。
ひとりで本当に寂しいときは、どうすればいい?
寂しさは、手当てが必要だという合図だ。すぐに恋人を見つけなきゃいけないという意味じゃない。まず小さなつながりから始める。たとえば決まった友達と定期的にごはんを食べる、毎週同じ人たちに会える集まりに行く。寂しさのせいで眠れない、仕事に影響が出ている、ずっと気分が沈んでいる、というなら、カウンセラーに話を聞いてもらうといい。日本なら、よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)や、いのちの電話 0570-783-556 にも電話できる。