元日の夜8時、親戚の集まりの真っ最中。鍋がまだぐつぐついってる。叔母さんがエビフライを取り分けてくれながら、テーブル中に聞こえる声で言う。「ねえ、今年はいい人できた?」。テレビはちょうどCMに入ったところ。向かいでは、いとこが1歳になったばかりの息子を抱っこしてる。隣の母は急にみかんの皮むきに集中し始める。
ここでは相手との距離に合わせて、3つの返し方をまとめる。それぞれにそのまま使える一言をつけた。男女は関係なく、お正月に帰れば誰でも聞かれる可能性がある。
親戚はなぜ毎年聞くのか。まず誰の課題かを分ける
ほとんどの親戚は、あなたを困らせたくてこの質問をしてるわけじゃない。上の世代の多くにとって、「相手がいる」はほぼ「この子は将来誰かに面倒を見てもらえる」と同じ意味で、恋人がいるか聞くのは、彼らが知ってる数少ない気づかいの言い方なんだ。もうひとつは比較。いとこが婚約した、近所の息子さんに2人目が生まれた。彼らも自分の親戚づきあいの中で同じように聞かれてる。
アドラー心理学に課題の分離という考え方がある。日本では『嫌われる勇気』で知った人も多いと思う。見分け方は簡単で、そのことの結果を最後に引き受けるのは誰か、を考える。誰といつ付き合うかは、その生活を送るのが自分だから、自分の課題。親戚の心配、焦り、友達の前で肩身が狭いという気持ちは、相手の課題。思いやることはできるけど、自分のスケジュールを差し出してそれを解決する必要はない。無料レッスンの課題の分離に、練習できる場面がもっとある。
ここで道がそれやすいのが2つの方向。ひとつは課題の分離を冷たさと取り違えて、一晩中ぶすっとしてしまうこと。その必要はない。笑って叔母さんに気にかけてくれてありがとうと言える。もうひとつは「自分の人生は自分で決める」と証明したくて、わざと反発して、その場で一生結婚しないと宣言すること。これも結局その質問に振り回されてて、向きが変わっただけ。従う必要もないし、誰かに見せるために反抗する必要もない。自分のペースで暮らせばいい。
恋人いるのと聞かれたらどう返す?相手との距離で決める
1. 年に1回会う遠い親戚、親の友達:一言で流して、話題を返す
見分け方:なんて呼べばいいかも先にこっそり母に聞かないとわからない。その人は聞き終わったら、次の瞬間にはほかの人に話しかけてるかもしれない。こういう質問は実はあいさつで、「元気?」とあまり変わらない。
返し方:笑って短く答えて、相手が話したくなる話題を投げる。
「まだです。いい知らせがあったら言いますね。おじさん、今年はどこか旅行行きました?」
大事なのは後半。親戚がいちばん話したがるのは、たいてい孫、体のこと、旅行の話。話題を投げれば、自然に流れていく。
やらないこと:なぜ独身なのかをまじめに説明すること。元恋人の話から仕事が忙しい話まで。相手はあいさつしただけなのに、説明すると20分続く話題を開けてしまう。
2. 毎年聞いてきて、さらに突っ込んでくる親戚:少し本当のことと、一言の線引き
見分け方:「まだ」と答えると、「選びすぎなんじゃない?」「おばさんが紹介してあげようか?」「同級生はもうみんな結婚したでしょう?」と続く。こういう親戚は本当に心配していて、本当にしつこい。
返し方:本当の情報を少しだけ出して、やわらかい線引きを一言足す。
「今はいないけど、気にはかけてる。これは自分のペースでやりたいから、できたらちゃんと言うよ」
それでも聞かれたら、ほぼ同じ言葉を、同じ平らな口調でもう一度言う。「本当に、自分で考えてるから」。たいてい2回目で止まる。どうしても止まらなかったら、立って台所に洗い物を手伝いに行くか、子どもたちとトランプをしに行く。そのテーブルを離れるのも、ひとつの答えになる。
断る理由を説明しなくていいし、謝らなくていい。また送ってきたら、同じ言葉を同じ調子で返す。
やらないこと:1回ごとに声が大きくなっていくこと。熱くなるほど、テーブル中が「この子、何か悩みでもあるのかな」と思って、来年もっと聞かれる。
3. 親:食卓では流して、別の日にちゃんと話す
見分け方:親は一言だけで終わることがあまりない。1年がかりのほのめかしに近い。「会社にいい人いないの?」「お母さんも別にせかしたいわけじゃないんだけど……」。心配がいちばん深いのも、いちばんきちんと向き合いたいのも、親だ。
返し方:お正月の食卓では、まず1の返し方で流す。別の日に、ふたりきりになれる時間を見つける。たとえば一緒に散歩してるときや、帰る前の晩。まず親の心配に応えて、次に自分の考えを話して、最後にひとつ質問する。
「将来ひとりになるのが心配なんだよね。自分もいい関係を持ちたいと思ってる。ただ、急いで適当な相手を選びたくない。いちばん心配なのはどこ?」
最後の質問がいちばん効く。多くの親が心配してるのは、実は「病気のとき誰が面倒を見るのか」「年をとって寂しくないか」だったりする。こういうことには具体的に答えられる。貯金してる、お互い助け合える友達がいる、自分のことをちゃんと大事にしてる。心配がはっきり言葉になると、会うたびに同じことを聞かれなくて済むことが多い。
やらないこと:安心させたくて「来年は絶対連れてくる」と軽く言うこと。来年の自分にもっと大きなプレッシャーを予約するのと同じで、寂しいからと誰かで妥協する方向に自分を押していくこともある。
よくある追加質問の受け方:1枚の表にまとめる
| 相手が言う | こう返す |
|---|---|
| 「選びすぎなんじゃない?」 | 「選んでるよ。長く一緒にいる相手だからね」。笑って認めたほうが、否定するより楽 |
| 「もういい年なんだから」 | 「そう、だから余計に適当にしたくない」 |
| 「おばさんが紹介してあげる」 | 会ってみたいなら:「じゃあ、まずどんな人か教えて」。会いたくないなら:「ありがとう。今はいいかな。必要になったらお願いする」 |
| 「いとこはもう2人目だよ」 | 「早いね。下の子、名前は何ていうの?」 |
| 「誰か好きな人がいるんじゃないの?」 | 「いたら言うよ。今は本当にいない」 |
| 「ええ人おらんの?はよ結婚せな」 | 「まだおらんねん。できたら一番に言うわ」。そのあと相手の体の調子を聞く |
どれも共通してるのは、言い争わない、細かいことを報告しない、話題を相手に返す、ということ。
もうひとつ、別に書いておきたいケースがある。好きになるのが同性で、まだ家族に話す準備ができていないなら、この質問はもっとつらい。お正月の食卓でカミングアウトするかどうかを決める必要はない。上の返し方はどれも、うそをつかなくていいし、それ以上を明かさなくてもいい。いつ、誰に話すかは自分の課題で、安全とタイミングは自分で判断すればいい。
お正月に独身なのは恥ずかしい?価値は恋愛の状態で決まらない
聞かれたあと何日も、心の中でもやもやが続く人は多い。たいていその一言は、もともと自分の中にあった不安にちょうど触れただけだ。「自分のどこかが足りないんじゃないか」
このふたつは分けて考えたい。相手がいるかどうかは、ひとつの状態。大事にされるに値するかどうかは、別の話。状態は変わるし、条件も変わる。でもふたつを結びつけた瞬間、お正月のごはん1回で自分を採点することになる。この違いは、無料レッスンの条件はそろったのに、釣り合わない気がするできちんと説明してる。
子どものころから比べ合う環境で育った人は多い。成績を比べ、学校を比べ、給料を比べ、誰が先に結婚するかも比べる。そのうち、人の進み具合が自分のものさしになって、ついていけないと遅れているような気がしてくる。これは個人の問題というより、環境に押しつけられた採点表のようなものだ。レッスンの東アジア式の自信のなさで、子どものころに身につけて今はゆるめていい思い込みをひとつ見つけられる。相手を選ぶときにまで「人に見せられるか」を先に考えてると気づいたら、人の目が気になる人へにセルフチェックがある。
聞かれたあと焦ってる?お正月のプレッシャーに決めさせない
いちばんよくある後遺症は、帰省から戻ったひとり暮らしの部屋での最初の夜に来る。その場の気まずさより厄介だ。夜中の1時にマッチングアプリを開いて一気に50人スワイプする。あるいは、本当は何も感じてないけど「少なくとも誰かいる」相手にOKしてしまう。
人と知り合いたいと思うのはまったく問題ない。ただ、プレッシャーはいい出発点にならない。「来年は報告しなきゃ」という気持ちでデートに行くと、相手は焦りを感じとりやすいし、自分もこの人が本当に好きなのかよく見えなくなる。この焦りがどう人を遠ざけるかは、恋愛で重いと言われる理由で分解してる。
いいやり方は、お正月の焦りをひとつのサインとして受け取って、自分に一言聞くこと。「関係が欲しいのは、自分が欲しいから?それとも、もう聞かれたくないから?」。前者なら、戻ってから自分のペースで人と知り合えばいい。出会いの場はどこにある?に、マッチングアプリに頼らない場をまとめてる。後者なら、向き合うのはそのプレッシャーのほうで、恋愛の状態はその次だ。
ネットの「親戚撃退」フレーズ集は勧めない
毎年お正月前になると、SNSで言い返しフレーズのまとめが出回る。給料を聞かれたら年金の額を聞き返す、いつ結婚するのか聞かれたら相手の結婚生活は幸せかを聞き返す。読んでるときはすっきりする。でも口に出したあとに待ってるのは、テーブル全体の沈黙と、母の顔色と、それから毎年のお正月だ。
もうひとつは、友達に恋人役を頼んで連れて帰るパターン。今年は乗り切れても、来年はどう収める?うそはどんどん大きくなって、親の期待もどんどん具体的になっていく。
「それは自分で考えてる」。言ったら話題を変える。
「じゃあ叔母さんは結婚生活、幸せなの?」
同じ言葉を同じ口調でもう一度言って、台所を手伝いに行く。
1回ごとに声が大きくなって、最後にはその場でキレる。
「今はいないけど、気にはかけてる」
友達に恋人役を頼んで連れて帰り、来年の言い訳はそのとき考える。
はっきり答えないでいながら、誰にも恥をかかせないことはできる。「それは自分で考えてる」は、どんな言い返しフレーズより効く。言い争いの材料を何も残さないからだ。自分の境界線は一度言えば十分。心の持ち方に関するほかの記事はマインドセットのページにまとめてある。
セルフチェック:受け方がわかってるか3問
1. 年に1回しか会わない遠い親戚のおじさんに、恋人はいるのか聞かれた。いちばんいい返し方は?
2. 叔母さんが2回目の「選びすぎなんじゃない?」。次はどうする?
3. 親がずっと、そろそろ付き合う人を作れとほのめかしてくる。いつ話すのがいちばんいい?
よくある質問
親戚に結婚をせかされるのが面倒。いっそお正月に帰らなくてもいい?
いい。それは自分で選んでいいことだ。でも本当は家族に会いたくて、あの質問だけが怖いなら、まず上の返し方を試してみてほしい。1年中帰らないより、たいてい失うものは小さい。本当に帰らないなら、早めに親に理由をはっきり伝えたほうが、直前に言い訳を作るよりいい。
親がずっと恋人を作れとせかしてくる。けんかにならずに話すには?
聞かれたその場では話さないで、落ち着いた時間を別に作る。まず親の心配がちゃんと聞こえていると伝えて、次に自分がどんな関係を望んでいるかを話して、最後に何がいちばん怖いのかを聞く。一度ちゃんと話すほうが、帰るたびに10分小言を言われるよりずっと効く。
「選びすぎ」と言われたらどう返す?
堂々と認めていい。「うん、一緒にいて合う人を選んでる」。選ぶこと自体は問題じゃなくて、選んでいるのが自分が本当に大事にしていることかどうかを見ればいい。条件や見栄えで選んでいて、一緒にいるときの感じが後回しになっていると気づいたら、そこは少し考えてみたほうがいい。
自分も本当は恋人が欲しくて、聞かれると特につらい。どうすれば?
そのつらさはごく普通のものだ。相手が、自分でも気にしているところを突いてきたから。まず自分に「欲しいけど、まだ出会ってないだけ」と認めてみる。親戚の前で気にしてないふりをするより、ずっと楽になる。それから、恋人が欲しい気持ちは自分を責めることに使わずに、動くことに使えばいい。