先にはっきりさせておくと、「合わせすぎる性格」は正式な心理学の診断名ではありません。ある癖を表すために、みんなが使っている言い方です。相手の機嫌を損ねるのが怖くて、自分が欲しいものを先にしまう。そうすれば好かれる、認めてもらえると思っている。
困るのは、恋愛ではこのやり方がうまくいかないことが多い点です。相手が好きになりたいのは、好みも意見もあって、ときにはノーと言う人です。いつも「なんでもいい」と言って、いつも同意していると、相手があなたを知る手がかりはどんどん減っていきます。
ここではまずLINEのやりとりとデートを1回ずつ見て、それからなぜそうなるのか、どう直せばいいのかを説明します。
恋愛で相手に合わせすぎると、どう見えるか
LINEのやりとり
相手は3回、あなたが自分の考えを言える機会をくれたのに、3回とも投げ返しています。
実はあなたは先週その映画を見ていて、あの長いラストがとても好きでした。見終わったあと、エンドロールが終わるまで席に座っていたくらいです。でも相手が長いと言ったので、自分も長いと言った。相手が音楽がよかったと言ったので、自分もよかったと言った。どこがいちばん好きかと正面から聞かれても、また質問を投げ返した。
ほんの1分のやりとりですが、話し終えたあと、相手があなたについて知っていることは、話す前とまったく同じです。相手が最後に「そっか笑」と返したのは、あなたが何も出さなかったので、拾うものがなかったからです。
自分の考えを言えば十分です。意見が違うほうが、かえって話が広がります。
デートを1回
初デートで、何を食べたいか聞かれて「なんでもいいよ、決めて」と答える。相手は激辛の火鍋を選び、あなたは辛いものがあまり得意ではないのに、合わせて大辛を頼み、一晩中水を飲み続ける。相手が何を言っても笑う。わからなかったことにも笑う。9時には帰って明日の資料を準備したかったのに、先に帰ると言い出せず、11時まで粘る。会計では急いで払おうとして、「待たせてすみません」と何度も言う。
翌日、メッセージが届きます。「本当にいい人だと思う。でも友達って感じかな」
ここまで読んで、不公平だと感じる人は多いでしょう。こんなに気をつかったのに、と。問題は、あの3時間、店選びから話題まで、決めていたのが全部相手だったことです。あなたは合わせ続けて、相手は家に帰っても、あなたが何を好きで何を大事にしているのかわからないままでした。
合わせすぎる人の特徴:この癖と照らし合わせる
- メッセージを打っては消し、相手が嫌な気持ちにならない口調か何度も確かめる
- 相手の返信が遅いと、謝りや説明を一言足したくなる
- いちばんよく言う言葉が「なんでもいい」「決めていいよ」
- 相手が黙ると、自分のどの一言がまずかったか反省し始める
- やりたくないことを引き受けて、あとで疲れてもやもやする
- 嫌なときに「大丈夫」と言って、何日もひとりで消化する
- 相手と意見が違うとき、口が先に「だよね」と言っている
1つか2つ当てはまるのは普通です。好きな人の前では、たいていの人が少し慎重になります。ほとんど当てはまって、しかも恋愛がいつも疲れると感じるなら、決まった癖になっている可能性が高いです。
合わせすぎと気づかいを見分けるには、自分にひとつ質問してみてください。これをしたあと、何を得たいと思っている?答えが「自分がしたいから」「相手に必要だと思うから」なら、気づかいです。答えが「相手に機嫌を損ねてほしくない」「相手にもっと好かれたい」なら、合わせすぎです。同じ行動でも、たとえば相手に夜食を買っていくのでも、どちらの動機もありえます。おごることやプレゼントも同じで、用語集の気前のよさと機嫌取りに例がもっとあります。
残業でおなかが空くだろうと思って、買ったら帰る。お返しは待たない。
これでもっと好きになってほしい。お礼がないともやもやする。
「ラーメン。角のあの店」
「なんでもいいよ、決めて」
「それは違うと思う。ラストがよかった」
口では「だよね」と言い、心の中では反対している。
「9時には帰る。今日は楽しかった」
先に帰ると言い出せず、11時まで粘る。
無料レッスンの合わせるほど魅力がなくなる理由に、このふたつを見分ける練習ができる場面がそろっています。
なぜ合わせるほど、相手は何も感じなくなるのか
相手があなたを知ることができない。ふたりが親しくなるのは、たいてい、こちらが自分のことを少し話し、相手も少し話す、というやりとりを繰り返して、少しずつ深まっていくからです。心理学者のアーサー・アロンらは1997年に有名な実験を行いました。知らない人どうしに、だんだん個人的になっていく質問に交互に答えてもらうと、話し終えたあと、雑談だけしたグループより互いを近く感じていたのです。これがのちによく聞く36の質問です。大事なのは「交互に」という点です。合わせすぎる人は質問するだけ、同意するだけで、自分のことはずっと話さないので、相手がどれだけ頑張っても、あなたと親しくなるのは難しいのです。
決めることを全部相手に投げている。「なんでもいい」は気づかいに聞こえますが、実際にはすべての決定を相手に渡しています。何を食べるか、どこに行くか、何を話すか、何時に解散するか。1回、2回ならかまいませんが、続くと相手は、あなたと出かけるのはツアーの引率みたいだと感じます。
合わせすぎる人は、こっそり帳簿をつけていることが多い。好かれるために相手に尽くしているなら、気づいているかどうかにかかわらず、心の中では帳簿をつけています。相手の反応が期待どおりでないと、その帳簿は「こんなに尽くしたのに」という不満に変わります。でも相手は、その取引に一度も同意していません。あなたが人に優しくしても、それで相手に借りができるわけではありません。あなたの優しさのあとに「だからOKしてくれるよね」が続くなら、相手が感じるのはプレッシャーだけです。
よくある誤解:合わせないというのは、冷たくなること?
「いい人はモテない。少し悪いほうが魅力がある」前半には少し当たっているところがあります。何でも合わせるお人好しは、確かに尊重されにくく、相手には扱いやすい人だと思われます。でも解決策は、悪くなることでも冷たくなることでもありません。必要なのは自分の基準を持つことです。食べたいものがあれば言う、行きたくなければノーと言う、相手が線を越えたらその場で「それは嫌だ」と言う。人に優しくするのは今までどおりでいい。ただ、その優しさを何かと交換しなくていいのです。
「合わせすぎるのは、自分が優しすぎるから」優しさそのものに問題はありません。でも合わせすぎは、たいてい何かと交換しようとしています。好きになってもらう、怒らないでもらう、チャンスをひとつもらう。相手はその「交換したい」気持ちを感じとるので、扱いやすい人だと感じます。そしてあなたは与え続けるうちに、自分が何を欲しいのかさえわからなくなります。
「合わせすぎる人は、うそっぽくて自分勝手」この言葉にも一理あります。合わせすぎる人は心の中で見返りを待っていて、差し出す優しさには条件がついています。でも、それを知ったからといって、自分を責め続ける必要はありません。合わせすぎは、たいてい子どものころに覚えた自分を守るやり方です。たとえば「いい子にしていないと好かれない」家で育った場合です。覚えたものなら、少しずつ練習して戻していけます。自分を責めると、直すための力を使い果たすだけです。
「合わせないというのは、何でも自分が決めるということ」そうでもありません。何でも自分が決める人になる必要はなく、聞かれたときに心の中の考えを言えば十分です。相手が同意しなくてもかまいません。
どう直すか。「主語の置き換え」から始める
合わせすぎる人は、頭の中の文の主語がよく相手になっています。「この店、普通すぎると思われないかな」「つまらない人だと思われないかな」「機嫌悪くなったのかな」
主語の置き換えとは、この主語を自分に戻すことです。
| 相手が主語 | 自分に戻す |
|---|---|
| この店、普通すぎると思われないかな? | 自分はこの店で食べたい? |
| つまらない人だと思われないかな? | 今日は何の話がしたい? |
| 相手はあの映画が好きかな? | 自分はあの映画が好き?なぜ? |
| 相手はそんなに早く帰りたくないんじゃないかな? | 自分は何時に帰りたい? |
これでも相手を気にかけていることに変わりはありません。ただ、先に自分が何を望んでいるかを知っていないと、相手と分かち合えるものがないのです。毎日一文つかまえて書き換え、書き換えた文のとおりに小さなことをひとつしてください。主語を置き換える無料レッスンで一通り練習できます。
上のふたつの例に当てはめると、こうなります。
- 「逆にあの長いラストがすごく好きだった。最後のところ鳥肌立った。どこを削ればいいと思う?」最後に質問をひとつ投げておけば、相手が反対でも拾うところがあります。
- 「辛いのは苦手だから、2色鍋にしよう」
- 「9時には帰って明日の資料を準備する。今日は楽しかった。次は自分が店を選ぶね」
最初にこう言うときは、すごく大きなリスクをとっている気がするかもしれません。たいていは何も起きません。相手は「いいよ」と言って、ふたりはそのまま食事を続けます。
相手の機嫌を損ねるのがとても怖いなら、こう考えると助けになります。あなたの好みを聞いた相手がどう感じるかは、相手の課題です。気にかけるのはかまいませんが、相手の気持ちを整える責任まで負う必要はありません。あなたが大辛を頼まないことで相手が不機嫌になるなら、それはふたりが合うかどうかを見せてくれているだけで、あなたのせいではありません。この分け方は課題の分離と呼ばれていて、合わせすぎが癖になっている人には特に役立ちます。
やりとりの習慣に隠れた合わせすぎもあります。相手の返信が遅いと謝る、何度もメッセージを足す、といったものです。これは既読スルーされたらを参考にしてください。やりたくないことをよく引き受けてしまうなら、罪悪感なく断る方法を。合わせすぎが「自分は足りない」という感覚と結びついているなら、劣等感が強いときはのほうがぴったりです。心の持ち方に関するほかの記事は、マインドセットのページにあります。
セルフチェック:気づかいと合わせすぎを見分ける3問
1. 「何食べたい?」と聞かれた。いちばん合わせすぎていない答えは?
2. 相手に夜食を買っていったのに、お礼を言われなくてもやもやしている。これは何を意味する?
3. 合わせすぎを直したい。正しいやり方は?
よくある質問
相手に合わせすぎる性格は、どうやってできるのですか?
ひとつの原因があるわけではありません。よくあるのは、子どものころから、ちゃんとしていないと好かれないと感じていたケースです。いい子でいる、言うことを聞く、大人を喜ばせる。それが長く続くと、まず人を満足させることが反射になります。これは性格の問題とは違います。子どものころは役に立って、大人になってからはよく裏目に出る癖、というだけです。
合わせすぎる癖は直せますか?
直せます。しかも一度に全部直す必要はありません。リスクの低いところから始めてください。たとえば友達に「今回は焼き鳥がいい」と言ってみる。それから少しずつ、大事な人にも使っていきます。最初の何回かはとても落ち着かないと思いますが、それは普通のことです。
「いい人だね」と言われるのに好きになってもらえないのは、優しすぎるからですか?
たいてい「優しすぎる」こととは関係ありません。よくあるのは、相手が「いい人」以外に、あなたがどんな人なのかを言えないことです。いい人止まりになる人の多くは、ずっと合わせていて、相手は最初から最後まで、その人が何を好きで何を大事にしているのか知らないままです。
付き合ってから、ずっと合わせていたことに気づきました。どう変えていけばいいですか?
そのまま伝えてかまいません。「自分がよく『なんでもいい』って言ってることに気づいた。これからは、食べたいものや行きたい場所はそのまま言うね」。それから小さなことから始めます。急に何でも自分の思いどおりにしようとすると、相手は驚きます。少しずつ言うことを増やしていけば、相手はたいてい、やっとあなたのことがわかってきたと喜んでくれます。