カップルのお金の話がこじれるのは、数字が計算できないからということはまずない。よくあるのは、「またデリバリー頼んだの?」のひと言が「あなたって本当に考えなしだよね」に聞こえてしまうこと。お金の話を始めたとたんに人柄の評価になったら、2人の声がどんどん大きくなるのは当たり前。
だから先に結論を言っておく。カップルでお金の話をするゴールは、2人ともやっていける計画を作ること。どっちがやりくり上手か、どっちがより相手を好きかを判定しても意味がない。順番も大事。この4ステップでいくのがおすすめ。まずそれぞれがお金とどう育ってきたかを話し、次に固定費を全部出して、そのあとお互いに報告なしで使えるお小遣いを決め、最後に2人の大きな目標を話す。順番さえ合っていれば、多くの喧嘩はそもそも起きない。
カップルのお金の話は、なぜとくに揉めやすい?
お金は、ただのお金で終わらないから。安心(貯金がこれより減ると眠れない)、自由(何を買うにも人の顔色を見たくない)、公平さ(なんでいつも自分が払ってるの)、そして家族(毎月実家に仕送りするか、いくらにするか)とつながっている。
心理学者のローレン・パップらは、夫婦100組に家での言い争いを日記に記録してもらい、全部で748回の喧嘩を集めた。お金はいちばん多い話題ではなかったけど、お金のことになると、ほかの話題より激しくなりやすく、くり返されやすく、結論も出にくかった。お金で揉めているときのほうが、2人とも解決しようと頑張っていたのに。理由は想像しやすい。あなたが話しているのはひとつの出費なのに、相手に聞こえているのは「あなたは私をどんな人間だと思ってるの」ということ。
もうひとつ混ざりやすいのが、お金と気持ち。「お金を出してくれないのは、愛が足りないから」「自分が多く出しているんだから、自分が決める」。どちらも、お金と気持ちをくっつけている。お金をどう分けるかは段取りの問題で、一緒にいたいか、お互いを尊重したいかは別の問題。2つを分けて話すと、ずっと話しやすくなる。
切り出す前に、3つ用意しておく
タイミングを選ぶ。カードの明細が届いた直後や、お金のことで揉めたばかりのときに切り出さない。お腹がいっぱいで、急いでいない週末の午後を選んで、最初にはっきり言う。「2人のお金をどうするか話したい。計画を作りたいだけで、誰かを責めるつもりはないよ。」
だいたいの数字を持っていく。それぞれの月収のだいたいの幅、固定費、それから借金があるかどうか。奨学金の返済、リボやカードローン、スマホや家電の分割払いなど。1円単位でなくていいけど、本当の数字にする。付き合って間もないなら、どこまで話すかは自分で決めていい。同棲や結婚の話が出てきているなら、もう少し多く開示したほうがいい。
自分がいちばん気にしていることを考えておく。貯金ができること?管理されたくないこと?不公平だと感じること?自分のポイントがわかっていれば、話しているときに何でもかんでも争わずに済む。
よくある失敗:相手の使ったお金の記録から入ること。「今月デリバリー23回頼んでたよ」と言った瞬間、相手は守りに入って、そのあと何も話せなくなる。
「デリバリーの予算、一緒に決めよう。」
「今月デリバリー23回頼んでたよ。」
「このままだと貯金できなくて心配。目標を決めよう。」
「あなたって本当にお金遣いが荒いよね。」
そのお金の使い道は、相手に任せる
「あのお金で、あの靴買ったの?」
カップルのお金の話の順番:4つのステップ
ステップ1:まず、それぞれがお金とどう育ってきたかを話す
いちばん飛ばされやすいのに、いちばん誤解を減らせるステップ。交代でいくつかの質問に答えてみて。
- 実家ではお金の話をしてた?それとも聞いちゃいけない話題だった?
- 子どものころ、親はお金のことで喧嘩してた?
- 口座にいくらあれば安心できる?
- 今、実家にお金を入れてる?これからどうするつもり?
話してみると、相手の「無駄遣い」の裏に「子どものころ何も買ってもらえなかったから、今やっと自分にやさしくできる」があることがよくわかる。あなたから見て「ケチ」なところも、「親がお金のことで夜中に揉めているのを見てきた」からかもしれない。習慣の裏には物語がある。物語を知れば、習慣を人柄だと思わなくなる。
よくある失敗:相手が話してくれた育ちの話を、あとで喧嘩の武器にすること。「だからそんなにケチなんだ、家がそうだもんね」。1回言えば、相手は次からもう本当のことを話してくれなくなる。
ステップ2:固定費を全部出す
毎月必ず出ていくものを並べる。家賃、光熱費、ネット、スマホ、交通費、保険、いろいろなサブスク(動画、音楽、クラウド)、2人での食事と日用品。そのうえで、誰が何を払うか、どう分けるかを決める。
決めたら書いておく。スマホのメモでも、共有のスプレッドシートでも、家計簿アプリでもいい。3か月たてば、最初に何を決めたか誰も覚えていない。書いた表が何度も2人を助けてくれる。
よくある失敗:大きい金額だけ話して、小さい出費を忘れること。家賃で揉めることはあまりない。毎日こすれるのは、デリバリー、タクシー、コンビニみたいな細かい出費のほう。これも表に入れるか、思い切って次のステップのお小遣いに含めてしまおう。
ステップ3:報告なしで使えるお小遣いを決める
それぞれ毎月、自分のお金を持つ。どう使ってもいいし、説明もいらないし、聞かれもしない。フィギュアを買う、スニーカーを買う、友だちと焼肉に行く。全部このお金から。金額は、それぞれの収入と2人の目標しだいで、同じでなくてもいい。
このお金は、多くのカップルにとっての平和協定。「また買ったの?」という喧嘩を、リストからまるごと消してくれる。
よくある失敗:お小遣いを決めたのに、相手が何に使ったかをチェックすること。「あのお金で、あの靴買ったの?」と聞いた時点で、それはもうお小遣いじゃない。相手のお小遣いの使い道は相手のこと。この線引きは、課題の分離の無料レッスンで練習できる。
ステップ4:2人の大きな目標は、最後に話す
前の3つがうまくいったら、大きな話に入る。一緒に海外旅行に行くための貯金、同棲の初期費用、緊急用の貯え、奨学金の返済、もっと先の結婚や家の購入。目標をひとつかふたつ選んで、毎月それぞれいくら貯めるかを決め、進み具合を一緒に見直す日を決めておく。
よくある失敗:いきなり家や結婚の話から入って、まだ準備ができていない相手をびっくりさせること。もうひとつは、「まだ家のためのお金は貯めたくない」を「あなたとの未来は考えてない」と聞いてしまうこと。目標は話し合えるし、調整もできる。どっちが真剣かを言い争うより、具体的な次の一歩に変えるほうが役に立つ。問題を解決する力のレッスンで練習するのが、まさにこの変え方。
カップルは割り勘?収入の比率で分ける?共同口座?
どれがいちばんということはない。今の2人に合っているかどうかだけ。
| やり方 | 仕組み | 向いている | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 割り勘 | 2人の出費を毎回半分ずつ | 収入が同じくらい、付き合い始め | 収入差が大きいと、収入が少ないほうがかなりきつい |
| 収入の比率で分ける | 2人の出費を収入の比率で分ける。たとえば6対4 | 収入差がはっきりある | 2人とも収入を見せ合う気持ちが必要 |
| 共同口座+それぞれのお金 | 毎月それぞれ共同口座に決まった額を入れて2人の出費を払い、残りは各自で管理 | 同棲中、付き合いが安定している | 共同口座から何を出していいか決めておき、定期的に照らし合わせる |
| 片方がまとめて管理する | 収入を1人がまとめて管理する | 2人とも本心から納得しているとき | 管理する人がひとりで決めないこと。もう片方がいつでも見られて、引き出せるようにする |
共同口座は、銀行の共同名義でなくてもいい。別に口座をひとつ作って2人で毎月決まった額を振り込む、あるいは家計簿アプリで2人の出費をつけて月末に精算する、というカップルも多い。大事なのは透明であることで、形はその次。
割り勘はよく「ロマンチックじゃない」と言われるけど、そうは思わない。ただの段取りで、愛情の点数とは関係ない。きっちり割り勘にせず、今回は自分がおごって次は相手、くらいでだいたいつり合っていればいい、というカップルもたくさんいる。おごりたいときは、気持ちよくおごればいい。でも、相手の機嫌を損ねるのが怖いからおごる、相手に何か借りを作らせたくておごる、というならそれは気前のよさとは違う。お金を払うときの気持ちのレッスンで、こうした気持ちを分けて見ている。
どの分け方でも、ひとつ気をつけたいことがある。ずっと同じ人が払い続けていて、もう片方がそれを当然だと思っている状態。本サイトの考えでは、関係の中でお金を払う役だけを引き受けて、いつも相手に合わせている人は、そのうち ATM 扱いされて、相手のときめきも一緒に下がっていく。相手があなたを好きなら、相手のほうからもあなたのために何かしたくなるもの。まだデートの初期で、最初に会うときにどっちが払うか迷っているなら、初デートは誰が払う?を読んでみて。
今回の話し合いがうまくいったか、どうやってわかる?
2人が急に同じお金の使い方になるのを期待しないこと。それはまず無理。現実的な目安はこう。
- 話し終わったら、書いた小さな表がある。誰が何を払うか、お小遣いはいくらか、2人の目標がひとつ。
- 裁かれたと感じている人がいない。
- 1か月後にもう一度見直す約束をしてあって、そのとき調整できる。
- 相手のお金の使い方はまだ自分と違うけど、それを人柄の問題だとは思わなくなった。
途中で喧嘩になったら、いったんやめる。次にいつ話すかを決めて、本当にまた話す。お金のことで何度も揉めて、毎回同じところで詰まるなら、同じことで何度も喧嘩するに、くり返す喧嘩の裏で本当は何を争っているのかを書いてある。
お金が束縛に変わり始めたら
金銭感覚が合わないのは普通のことで、話し合えるし、すり合わせもできる。でも次のようなことは、もう感覚の違いの範囲を超えている。
- 片方がお金を全部握っていて、もう片方はお金を使うたびに報告してレシートを出さなければならず、しかもよく断られる。
- 相手を働かせない、あるいは相手の仕事をずっと邪魔する。
- あなたの名前でお金を借りる、カードを作る、保証人になれと言う。
- 「自分が多く出してるんだから、言うことを聞け。」
- あなたが渡したくないものとお金を引き換えにする。高いプレゼントを贈る、どんどんお金を使って、体の関係や大きな決定であなたに譲らせる。あるいはお金を貸して、あなたが離れにくくなるようにする。
お金による支配は、支配的な関係ではとてもよくあるもので、相手が離れるためのコストさえ払えなくしてしまう。こうした説明に自分の状況が重なるなら、まずPUAの被害にあっているサインのセルフチェックと照らし合わせてみて。怖い、脅されていると感じるなら、安全を第一にして。日本では DV相談+(0120-279-889、24時間)や DV相談ナビ(#8008)に相談できる。誰かに話を聞いてほしいときは、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)へ。緊急のときは110番。まだ会ったこともないのに、マッチングアプリで投資や借金の話をしてくる相手がいたら、そこでやりとりをやめよう。
関係の中のほかの悩みは、恋愛関係のトピックにまとめてある。
セルフチェック:お金の話ができるか3問
1. 相手とお金の話をしたい。いちばんいい切り出し方は?
2. 毎月それぞれお小遣いを持つと決めた。相手がそのお金ですごく高い靴を買った。どうする?
3. 相手が「自分が多く出してるんだから、言うことを聞いて」と言った。これは?
よくある質問
カップルは割り勘にしないといけない?
しなくていい。割り勘が合うのは、収入が同じくらいのときや、付き合い始めでまだ手探りのとき。収入差が大きいなら、収入の比率で分けるほうがたいてい公平。大事なのは、2人とも納得できて、そのことを口に出せること。
付き合ってどれくらいでお金の話をしていい?
どっちがおごるか、どう分けるか、くらいの小さい話はいつしてもいい。収入、借金、貯金のような話は、たいてい真剣に付き合い始めて、同棲や先のことを考えるようになってから開示する。一度に全部話さなくていいけど、同棲する前には一度話し合っておくのがいい。
恋人がお金を使いすぎる。どう切り出せばいい?
「お金遣いが荒い」から始めないで、「このままだと貯金できなくて心配」から始める。自分の心配を伝えて、それから一緒にお小遣いの額と貯金の目標をひとつ決める。相手のお小遣いの使い道は、相手に任せる。
恋人がいつもお金を出してほしい、立て替えてほしいと言ってくる。どうする?
たまにおごる、1回手伝うくらいは何でもない。でもそれが習慣になったら言ったほうがいい。半分冗談で「じゃあ、こっちの分もたまには払ってよ。お互いさまで」と返してみる。相手がそれはだめだと言うなら、はっきり言う。「こっちに尽くしてほしいのに、自分は何もしないのは不公平だよ。」お金を出すか、出す価値があるかは、自分で判断すればいい。「それくらいの額、たいしたことないでしょ」と誰かに言われる必要はない。
結納金を渡したのに、相手が結婚したくないと言い出した。返してもらえる?
返してと言うのは普通のことで、受け取ったのに結婚しないなら、返すのが筋。多くの国や地域で、婚約が解消されたときに、婚約のために贈ったものの返還を求められる場合がある。金額が大きくて相手が応じないなら、まず弁護士や公的な法律相談の窓口に聞いてみて。
カップルで共同口座は作ったほうがいい?
同棲中や長く付き合っているなら、2人の出費専用の口座があると便利。ただ、お金を全部そこに入れる必要はない。おすすめは、2人の出費は共同口座から、残りはそれぞれで管理するやり方。揉めるポイントがかなり減る。