自己肯定感は、自分は好かれていい、大事にされていい、と心の中で思えるかどうかの感覚です。自己価値感と呼ばれることもあります。自信と混ぜて語られがちですが、このふたつは別物です。自信が答えているのは「自分にできるか」で、自己肯定感が答えているのは「できなくても、自分には価値があるか」です。
さらに3つ目に、このふたつとよく取り違えられるものがあります。あなたが持っている条件です。収入、見た目、学歴、肩書き。こちらは「価値」と呼ぶほうがしっくりきます。人から見えて、比較的早く変えられる部分です。
3つが混ざると、よくある戸惑いが生まれます。仕事で昇進した、体も鍛えた、マッチングアプリの写真も撮り直した。それなのに好きな人に会う前になると、なぜまだ緊張でキャンセルしたくなるのか。まずはこの表を見てください。
条件、自信、自己肯定感:一枚の表で違いを見る
| 条件(価値) | 自信 | 自己肯定感 | |
|---|---|---|---|
| 答えている問い | 自分は何を持っているか? | 自分にできるか? | 自分には価値があるか? |
| 例 | 月収、身長、学歴、役職 | 「プレゼンは得意」「料理がうまい」 | 「断られても、自分はわりといい人間だ」 |
| 範囲 | リストにできる | 分野ごと。仕事ではあるのに恋愛では全然ない、はよくある | 全体的。どの場面にもついてくる |
| どこから来るか | 努力、運、環境 | やったこと、うまくいったこと、教わったこと | 小さいころどう扱われたかと、今の自分が自分をどう扱っているか |
| 変わる速さ | ときにとても速い | 中くらい。練習すれば伸びる | 遅い |
| もっと条件のいい人に会ったとき | 負けてしまう | 分野しだい | 安定していれば、あまり揺れない |
| 断られたとき | 揺れない。条件はそのまま | その分野の自信が少し下がる | 低いと、自分という人間ごと否定された気がする |
| デートでは | 相手がもう一度見てくれる、座ってくれる | 声をかける、誘う勇気をくれる | 嫌なことを嫌と言える、断られても立っていられる、急いで機嫌をとらなくていい |
いちばん下の「デートでは」の行を見てください。条件は、相手が座ってくれるかどうかを決めます。自信は、あなたが声をかけられるかどうかを決めます。座ったあと、相手があなたをどう扱うか、あなたが自分らしくいられるかは、おもに自己肯定感で決まります。
自己肯定感とは?条件のリストと違う理由
自己肯定感を条件の合計だと考えると、いつまでも「あと少し足りない」と感じ続けます。心理学には「随伴性自己価値」という考え方があります。自分に価値があるかどうかを、見た目、人からの評価、仕事の成果など、いくつかの分野に賭けている人がいる、という話です。研究では、こういう人ほど、その分野でうまくいったかどうかで気分が大きく上下することがわかっています。
見た目に賭けている人は、写りの悪い写真1枚で1日が台なしになります。人からの評価に賭けている人は、既読スルー1回で夜が台なしになります。仕事に賭けている人は、上司にひとこと言われただけで、家に帰ると自分はダメな人間だと思ってしまいます。
安定した自己肯定感は、自分をすごいと思うこととも、ナルシシズムとも違います。むしろ一本の底のラインに近いものです。「自分はミスもするし、断られもするし、人に負けることもある。それでも大事にされていい」。このラインがあるから、思いきって挑戦できます。失敗しても、自分という人間ごと引きずり下ろされないからです。
自己肯定感が低い人によくある様子はこうです。相手が少しでも不機嫌になると先に謝る。断るのが苦手。ほめられると落ち着かない。批判されると何日も引きずる。あるいはその逆で、人より上だと証明しないと気がすまない。
自信とは?自信はあるのに自己肯定感が低いのはなぜか
心理学で自信を語るときによく使われるのが「自己効力感」です。ある特定のことを自分はやれる、と信じる気持ちのことで、分野ごとに分かれています。エンジニアがコードレビューでははっきり意見を言えて、突っ込まれても慌てないのに、マッチングアプリを開くと最初のひとことを10回書き直す、ということは普通にあります。
だから「自信がある」と「自己肯定感が高い」は、別々に現れることがあります。いちばんよくあるのは、人と比べることで支えている自信です。自分の車のほうがいい、給料が高い、背が高い、だから自信がある。この自信はランクマッチのようなもので、もっと条件のいい人が現れたとたんに崩れます。
大学の同窓会を想像してみてください。あなたは課長になったばかりで、ずっと楽しく話していました。ところが誰かが、先月都内にマンションを買ったと言い出して、みんなの注目が一気にそちらへ移ります。さっきまでの得意な気持ちは急にどうでもよくなって、後半はほとんど口をききませんでした。
心理学には「もろい高自尊心」という言い方があります。高く見えるけれど、勝ち続けないと支えられない自己評価のことです。ランクマッチ型の自信の無料レッスンで、こういう場面をほかにも見比べられます。
条件がよくなっても、なぜ不安なのか?
多くの人がいちばん聞きたいのはここだと思います。答えはこうです。条件が変えるのは人の注目だけで、自分に価値があると思えるかどうかには届きません。
写真をよくすれば、マッチ数は本当に増えます。それでも会う前の晩、あなたはキャンセルする理由を考えています。昇進して名刺の肩書きは立派になったのに、会議で自己紹介するときは自分が偽物のように感じて、いつかばれる気がしています。心理学ではこれをインポスター現象と呼んでいて、結果を出している人でもよく経験します。
条件がよくなると、かえって不安が大きくなることさえあります。前は失うものなんてないと思っていたのに、今は守らなければいけないものができた。前は断られても条件のせいにできたのに、今は条件がそろってしまって、断られたら「自分という人間がダメなんだ」という説明しか残らない気がする。条件と自己肯定感がなぜ一緒に変わらないのかは、条件がよくなっても、まだ釣り合わない気がするのレッスンでしっかり練習できます。
条件はどうでもいい、という話をしているわけではありません。身だしなみを整える、仕事をきちんとする。これは早く変えられますし、相手がもう少し話してくれるかどうかにも実際に影響します。でも、嫌なことを嫌と言える、急いで機嫌をとらない、断られても立っていられる、といったことはゆっくりしか変わらないのに、相手がそのあとあなたをどう扱うかを決めます。両方を見ておきましょう。ただ、片方が伸びれば、もう片方も勝手に埋まるとは思わないでください。
アファメーションは効く?本物の中身と借りものの中身
自己肯定感を上げたい人が最初に思いつくのは、アファメーションかもしれません。毎朝鏡に向かって「自分は大丈夫」「自分は愛される価値がある」と言うやり方です。
これは人によっては効きますが、いちばん必要な人には逆効果になることがよくあります。参加者に「自分は愛される価値のある人間だ」とくり返し言ってもらった研究では、もともと自己評価が低めの人ほど、言ったあとかえって気分が悪くなりました。理由は想像がつきます。言葉と心の中の感覚がかけ離れていると、一回言うたびに、心の中で一回言い返しているからです。
似たものに、人の話し方をまねる、「デキる男」っぽいふるまいを丸暗記する、友達に励ましてもらってその場をしのぐ、などがあります。どれも短い間なら自信があるように見せられます。でもその状態は借りものなので、場がしらけたり、突っ込まれたり、断られたりすると消えてしまいます。本物の中身は持ちこたえ、偽物の中身は崩れるのレッスンは、このふたつを分けることだけを扱っています。
本物の中身は、無理に支えなくても立っていられるものです。欠点を言い当てられたとき、笑って認められる。断られたその晩、悲しくはなっても、自分という人間がまるごとダメになったとは思わない。こういうものは口で言っても育ちません。「やってみた。それでも自分は大丈夫だった」という経験を一回ずつ積み重ねていくしかありません。具体的な積み重ね方は、劣等感が強いときはの5つの小さな行動を見てください。
自分に足りないのはどれか、どう見分ける?
下の言葉と見比べて、どれがいちばん自分の心の声に近いか見てください。
| 心の声 | 足りない可能性が高いもの | まずやること |
|---|---|---|
| 「何を言えばいいかわからない。間違えるのが怖い」 | 自信(スキル) | 練習してフィードバックをもらう。一度に変えるのは1点だけ |
| 「声のかけ方はわかる。でも相手が自分を選ぶわけがない」 | 自己肯定感 | 気持ちが整うのを待たずに、いちばん小さな一歩を先にやる |
| 「10キロやせて昇進してから考える」 | 自己肯定感を条件に結びつけている | 条件はこれまでどおり磨く。ただ、始めるための入場券にしない |
| 「その場の人に勝たないと、話せない」 | ランクマッチ型の自信 | 話題を自分が大事にしていることに戻す。比べない |
| 「断られたら1〜2日落ち込むけど、そのあとは大丈夫」 | 実はどれもそこそこある | 今やっていることを続ける |
| 「断られると、何週間も自分はダメだと思う」 | 条件つきの自己肯定感 | 「自分はこういう人間だ」を「今回は」に言い換える。必要なら人に相談する |
1〜2日落ち込んで、今回はふたりが合わなかったとわかっている。
何週間も自分はダメな人間だと思う。
いつもどおり、自分が大事にしていることを話す。
比べ始めるか、一晩中しゃべる気がなくなる。
嫌ならそのまま言う。「こういうのは好きじゃない」
まず自分の何が悪かったかを反省して、もっと機嫌をとろうとする。
恋愛で自己肯定感が低いといちばん困るのは、関係の中で求められなくなることです。「こういうのは嫌だ」と言えない。相手がそっけなくなるとまず自分を責める。ひどい扱いを受けても我慢して離れない。逆に、自己肯定感が安定している人のいちばんはっきりした特徴は、離れるべきときに離れられることです。
好きな人に近づくときに特に固まってしまうなら、好きな人に釣り合わない気がするときはが給湯室の場面から話を始めています。心の持ち方に関するほかのテーマは、全部マインドセットのページにあります。
セルフチェック:足りないのはどれか3問
1. 「声のかけ方はわかる。でも相手が自分を選ぶわけがない」。足りないのはどれに近い?
2. 昇進して、やせたのに、好きな人に会う前はやっぱりキャンセルしたくなる。いちばんありそうな理由は?
3. 安定した自己肯定感に近いのはどれ?
よくある質問
自己肯定感と自尊心はどう違いますか?
心理学の研究では、このふたつはほぼ同じ意味で使われることが多く、どちらも自分に対する全体的な評価を指します。日常の使い方では、自尊心を「自分はうまくやれているか」という感覚としてとらえて、成功や失敗で上下するものと考える人が多いです。一方、自己肯定感はもっと土台にある「自分は大事にされていい」という感覚で、成果と引き換えにしなくていいものとして使われます。ここでは後者の分け方を使っています。
自己肯定感が低いのは、子どものころのせいですか?
関係はあるかもしれませんが、それだけが原因ではありません。子どものころによく比べられた、否定されたという経験は、たしかに「自分は足りない」という前提を残しやすいです。とても傷ついた恋愛や、長い失業でも自己肯定感は下がります。どこから来たかを知ると自分を理解する助けになりますが、一生の判決ではありません。こうした前提は大人になってからでも少しずつ書き換えられます。
恋愛をすれば自己肯定感は上がりますか?
ちゃんと大事にされると、たしかに安心します。でも相手に自己肯定感を埋めてもらおうとすると、相手が少しそっけないだけで自分がまるごと崩れてしまいますし、相手も重く感じます。まず自分が少し立てるようになって、それから関係がもっと安定させてくれる、という順番のほうが崩れにくいです。
自己肯定感が高い人は、自分勝手ですか?
たいていはその逆です。自己肯定感が安定している人は、誰かに勝って自分を確かめる必要がないので、人のことを考える余裕があります。批判を聞き入れられない、何でも一番になろうとする、というのは、自己肯定感がもろいときによく見られる様子です。