木曜の夜11時半。明日のプレゼン資料をやっと保存して、ベッドに入ったら眠ることしか考えられない。そこへ恋人が後ろから抱きついてきて、手がそわそわ動きはじめ、耳もとで小さく聞きます。「今日、いい?」
したくないとき、どう言えばいいか。まずひとつの原則を覚えておきます。断るのは「今日」で、相手その人とは関係ない。この2つを分けてはっきり言えば、気まずさのほとんどは起きません。「今日じゃない」と言い、「あなたのせいじゃない」とも言う。そうしたければ、別の形の触れ合いを出します。
この記事は、断る側に向けて書いています。断られた側がどう受け止めるかは恋人に夜の誘いを断られたらにあります。どちらの記事も「相手」と書き、性別は分けません。
口を開く前に、どの「したくない」かを分ける
同じ「今日はやめとく」でも、その裏にあるものはずいぶん違います。
- 疲れている、ストレスがたまっている、体調が悪い。いちばんよくある理由で、今夜はっきり言えば済みます。
- けんかしたばかり、または心に何か引っかかっている。そんなときに無理に触れ合うと、たいていもっと距離ができます。今夜は先に断って、その件は明日話せばいい。
- もうしばらく、したい気持ちが起きていない。仕事、睡眠、ストレス、薬、体の痛みかもしれないし、関係の中に片づいていないことがあるのかもしれない。これは別の話し合いが必要で、今夜ベッドの上では解決しません。
- 求め方そのものが嫌。いつもあなたが寝落ちしかけたとき、いつも飲んだあと、断るといつも怒る、など。これは言葉にしておくべき境界線です。
分けておくと、今夜は今夜のことだけを扱えばいいとわかります。相手に出す理由を準備する必要はないし、診断書を出す義務もありません。
やさしく、はっきり伝える5つの言い方
1. 「今日じゃない」と言い、「あなたのせいじゃない」とも言う
断られた人がいちばん勝手に想像しやすいのは、「もう自分に魅力がないのかな」です。あなたが「あなたのせいじゃない」と半分足すだけで、相手のいちばん痛い想像をひとつ取りのぞけます。
よくある失敗:「嫌」とだけ言って背を向け、あとは相手に推測させる。あなたに誰かをなだめる義務はありませんが、一言のコストはとても小さく、それで二人とも眠れます。
2. 別の形の触れ合いを出す
「今日はしたくないけど、くっついて寝たい。」あるいは「この回を見終わったら、くっついて寝よう。」
この一言には研究の裏づけがあります。心理学者ジェームズ・キムらは恋人同士がどう断るかを調べ、そのひとつではカップルに毎日記録をつけてもらいました。断られた側が、相手の断り方に安心させてくれるものがあったと感じていたとき、たとえばまだ惹かれている、まだ好きだと伝えてくれた、別の形で体に触れようと言ってくれたときは、関係にも性生活にも満足している度合いが高くなっていました。敵意のこもった断り方だと、満足度は低くなっていました。
よくある失敗:自分もしたくないことを、埋め合わせとして持ち出す。別の触れ合いは、本心から差し出したいものでないと効きません。今日はくっつくのも嫌なら、4つめをそのまま使えばいい。
3. 別の時間を出す。ただし本当にそうしたいときだけ
「今日は本当に無理。土曜の朝にしよう。そのころには二人ともよく寝てるし。」
今日が疲れているだけで、気持ちはあるなら、自分から時間を出すと相手はとても安心します。問題が本当に時間だけだとわかるからです。
よくある失敗:今夜をうまく収めるために、とりあえず「明日ね」と言う。明日になってもしたくなければ、その一言はあなたが背負った借りになり、次に断るのがもっと言いにくくなります。自信がないなら、時間は出しません。
4. 短く、まっすぐ、理由をつけない
「今日はしたくない。」
この一言で完結しています。説明してもいいけれど、説明しなくていい。理由が多いと、相手は「解決」しはじめます。疲れたと言えば、寝てるだけでいいよと言われる。明日早いと言えば、すぐ終わるからと言われる。理由が乗り越えるべき障害に変わります。断ることは、相手が納得してくれて初めて成立するものではありません。理由は要らないのインタラクティブなレッスンで練習するのはそのことです。
よくある失敗:頭痛など、もっと「正当」に聞こえる理由を作る。うそをつくと、次に本当のことを言うのが難しくなります。それに、理由はいつか見破られるか、解決されてしまいます。
5. 始まってから止める
「待って、やめたい。」
始まってからでも止めていい。さっきはしたかった、今はしたくない。それはまったく普通のことで、最後まで我慢する必要も、「もう始まっちゃったし」と自分を説得する必要もありません。言ったら止めていい。そのあと話したいなら話す、くっついていたいならくっつく、一人で静かにしたいならそうする。どれでもかまいません。
よくある失敗:中断するのが気まずくて、最後まで我慢する。相手があとから知ると、その場で止められるよりたいていつらい思いをします。
この5つは組み合わせて使えます。もっといろいろな場面を練習したいなら、「嫌」の言い方のレッスンを見てください。
ちゃんと言えたかどうかの見方。相手ががっかりするのは普通のことなので、それを基準にはしません。あてになるのは、うそをつかなかった、5回続けて謝らなかった、翌朝も二人で普通におはようと言えた、のほうです。
恋人が何度も求めてくるときは
嫌と言ったのに、相手が何度も聞いてくる、ねばってくる。そうなると、もう言い方の問題を超えています。
- その場で交渉をやり直さない。「今日はやめとくってもう言ったよ。寝よう。」同じ言葉をくり返すだけでいい。聞かれるたびに理由をひとつ足す必要はありません。
- 別の日に、そのパターンを言葉にする。昼間、二人ともリラックスしているときを選びます。「嫌って言ったとき、あなたが何度も聞いてくるのがすごくプレッシャーで、次はもっとしたくなくなる。1回聞いたら止めてほしい。」
- どんな返事がほしいかを伝える。断られたときにいい返し方があるなんて考えたこともない人は多いのです。そのまま言っていい。「『わかった、じゃあハグだけ』って返してくれたら、すごく安心する。」安心させる一言がどんなものかは、無料レッスンのあなたがしたくなければ何も起きないで分解しています。相手に送って一緒に見てもいい。
- こういう反応に気をつける。断られてため息をつく、背を向ける、翌日から口をきかない。「もうどれくらいしてないと思ってるの」と数える。「ほかに誰かいるの?」と聞く。「長いことしないとおかしくなる」と言う。どれも、あなたの「嫌」に代償を払わせるものです。たまに1回なら、気持ちの処理がうまくいかなかっただけかもしれません。何度も起きるなら、それは圧力です。罪悪感で人を動かすやり方に、こういう言い方への返し方をまとめています。
あなたが嫌と言うと、相手が怒鳴る、物を投げる、脅す、あるいはあなたが嫌がっているのに無理やりしたことがある。そうなら、もう話し方のスキルで扱える範囲を超えています。安全をいちばんに考えてください。相談先は下にあります。
嫌と言ったあと、あなたが負っているものはない
ネットでよく見かけるアドバイスがあります。「たまには合わせてあげたほうが関係はうまくいく。」これは半分だけ合っています。
合っている半分。恋人同士では、特にしたいわけではないけれど相手に付き合いたくて引き受けることがあり、それは思いやりの形になりえます。間違っている半分。引き受けた本当の理由が、相手が怒るのが怖い、口をきいてもらえなくなるのが怖い、好きじゃないのかと言われるのが怖い、なら、それは思いやりとは言えません。あなたは代償を払っています。そういう「いいよ」が増えると、二人とも同じことを学びます。この関係では、嫌と言うのは高くつく、と。
だから、「今日はやめとく」と言ったあとは、
- 理由を負っていない。
- 「埋め合わせ」を負っていない。翌日わざわざ自分から誘って取り戻す必要はない。
- 罪悪感を負っていない。相手はがっかりしていい。それは相手の気持ちで、あなたは何も悪いことをしていない。
やさしくしていいし、くっついて寝てもいいし、翌日ゆっくり話してもいい。でもそれは、あなたが差し出したいから差し出すものです。断ったあとの罪悪感が特に重いなら、上手な断り方に、練習できる言い方がもっとあります。
「したくない」がしばらく続いているなら
二人が触れ合いたい頻度が違うのは、長い付き合いではとてもよくあることで、多くのカップルがある時期にぶつかります。相性が悪いということでも、どちらかに問題があるということでもありません。
性の研究でよく出てくる区別に、医師ローズマリー・バッソンが提案したモデルがあります。ある人の「したい」は「自発的」で、ふいにわいてくる。別の人はもっと「反応的」で、リラックスして、大事にされて、近くにいると感じたあとで、ゆっくり出てくる。後者はとてもよくあることで、普通のことです。ただ、はっきり言っておきます。この考え方は「先に始めてしまえば、相手も自然とその気になる」という意味に誤用されがちですが、それは間違いです。反応的な「したい」に必要なのは、よく寝ている、急いでいない、昼間をいい感じに過ごした、といった合った状況です。一度の「嫌」を乗り越えることは、そこにまったく入っていません。
このことを話したいなら、昼間に、ベッドの外で、断った直後は避けて話します。「最近、したい気持ちにならないことが多くて、話したい。あなたを好きかどうかとは関係なくて、自分がどうなっているのか知りたい。」ストレスなのか、生活リズムなのか、体なのか、関係の中で何かが引っかかっているのか、二人で一緒に見ていけます。体の痛み、薬、気分の落ちこみが関わっているなら、医師に相談できます。何度か話してもまだ行き詰まるなら、カップルカウンセリングも選択肢です。
恋人同士の同意をもっと詳しく知りたいなら、付き合っていても同意は要る?よくある誤解を見てください。境界線についてのほかの記事は同意と境界線のトピックページにあります。
嫌と言うのが怖いときは、DV相談+ 0120-279-889(24時間)や DV相談ナビ #8008 に相談できます。性暴力の被害は、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891 へ。誰かと話したいときは、よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)。緊急のときは110番です。
セルフチェック:恋人に「嫌」と言えるか3問
1. 恋人が抱きついてきて「今日、いい?」と聞いた。あなたはすごく疲れている。いちばんいい一言は?
2. 今日は疲れているだけで、週末はしたい。どう言える?
3. 嫌と言ったのに、相手が何度も聞いてくる。その場でどうする?
よくある質問
恋人の誘いを断り続けると、関係は悪くなる?
断ること自体で悪くなるとは限りません。どう断るか、そのあとどう話すかのほうが大きく影響します。温かさのある断り方と、別の機会にお互いの求めることをきちんと話すこと。この組み合わせは、無理に引き受けるより、たいてい関係を守ります。断るのが当たり前になっているなら、それは二人で一緒に向き合うサインで、あなた一人のせいではありません。
したくないのに、相手が怒るのが怖くて引き受けた。これは同意?
相手が怒るのが怖い、口をきいてもらえなくなるのが怖い、傷つけられるのが怖くて引き受けたなら、自由な同意とは言えません。相手に付き合いたくて引き受けるのと、怖くて引き受けるのは、まったく違うことです。いつも後者なら、まず信頼できる友達やカウンセラーに話してみてください。身の危険を感じるときは、DV相談+ 0120-279-889(24時間)に相談できます。
したくないのは、相手をもう好きじゃないということ?
そうとは限りません。ストレス、睡眠、体調、子育て。どれも、したい気持ちに影響します。愛情と性欲はつながっていますが、同じものとは限りません。
恋人に断るとき、理由は必ず言わないといけない?
言わなくていいです。言いたければ言えばいいし、言えば相手が少し安心するかもしれません。でも断ることは、理由がなくても成立します。「今日はしたくない」の一言で足ります。