愛着理論でいう愛着スタイルは、ある人が親密な関係の中で、近づくこと、距離、先の見えなさにどう向き合うかを表したものです。いちばんよく聞く分け方は4つで、安定型、不安型、回避型、そしてあまり話題にならない混乱型(恐れ回避型とも呼ばれます)です。
ここ数年、ネットでよく見かけるようになり、レッテル貼りにも使われがちです。「既読スルーするってことは、絶対回避型だよ」「自分は不安型だから、もうどうしようもない」。この記事で伝えたいのは、その反対のことです。愛着スタイルはひとつの傾向で、相手、関係の段階、最近起きたことによって動きます。恋愛での自分の反応を理解する助けにはなりますが、他人を診断するのには向きません。
愛着理論はどこから来た?
愛着理論は、イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィが、赤ちゃんにはなぜ頼れる世話役が必要なのかを説明するために考えたものです。その後、心理学者のメアリー・エインスワースが、幼い子どもが母親と少しの間離れ、また会ったときの反応を観察し、安定、不安、回避のいくつかのパターンにまとめました。1987年、シンディ・ハザンとフィリップ・シェイバーが大人の恋愛に愛着理論を当てはめた論文を発表し、そこからいま知られている「愛着スタイル」の考え方が広まりました。
いまの研究では、4つのマスに分けるより、2本の軸で見ることが多くなっています。
- 不安:見捨てられることをどれだけ心配するか、相手がまだそこにいると確かめたい気持ちがどれだけ強いか。
- 回避:親密になること、人に頼ることがどれだけ落ち着かないか。
4つのタイプは、この2本の軸が描く4つの角です。
| 回避が低い | 回避が高い | |
|---|---|---|
| 不安が低い | 安定型 | 回避型 |
| 不安が高い | 不安型 | 混乱型(恐れ回避型) |
ほとんどの人は真ん中あたりのどこかにいて、どちらかに少し寄っているだけです。ちょうど角にいる人はめったにいません。「あなたは何型?」に答えるのが思ったより難しいのは、このためです。
安定型:近づいても慌てない、離れても慌てない
安定型の人も不安になります。ただ、不安になったときにわりと素直に口に出せて、相手が応えてくれると信じやすいのです。
- 場面1:相手が「週末、大学の友だちと海の近くへ一泊してくる」と言います。「わかった、楽しんできてね」と返して、自分はいつもどおり週末を過ごします。ときどき相手のことを思い出しても、ずっとスマホを見続けたりはしません。
- 場面2:ケンカした日の夜、まだ少しもやもやしているので、こう言います。「さっきのひと言、嫌だった。ちゃんと話そう。」無視もしないし、何もなかったふりもしません。
安定型の人も嫉妬するし、傷つくし、ケンカもします。違うのは、そうした気持ちを、試したり消えたりして処理することが少ない点です。
不安型:距離ができると、すぐ警報が鳴る
不安型の人はつながりをとても大事にしていて、関係の中の距離にとくに敏感です。相手が少しそっけないだけで、心の中で大きな警報が鳴ることがあります。
- 場面1:相手はふだん返信が早いのに、今日は午後3時から連絡がありません。自分が最後に送ったメッセージを5回読み返し、どこか言い方がまずかったかと考え始め、インスタを開いて相手がオンラインかどうか確かめます。
- 場面2:相手が「最近仕事が忙しくて、今週は会えないかも」と言います。口では「全然いいよ」と言いながら、その後2日間はいつもより多くメッセージを送り、「忙しいならいいよ、どうせ私なんて大事じゃないし」と送って、相手がなだめに来るか様子を見ます。
こうした行動は、愛着の研究では抗議行動と呼ばれます。たくさん送る、試す、相手に嫉妬させる、わざとケンカをする。相手を引き戻して、関係がまだあると確かめたいのです。その下にある怖さはたいていシンプルで、見捨てられるのが怖い、自分は大事にされていないのではと怖い、というものです。困るのは、抗議行動をされると相手は追い詰められたように感じて、かえって遠ざかることが多い点です。
試すことで相手を引き戻して、関係がまだあるか確かめようとしています。相手は追い詰められたように感じて、かえって離れていくことが多いです。
回避型:近づかれると、一歩引きたくなる
回避型の人は自立を大事にしていて、自分のことは自分で片づけるのに慣れています。関係がとても近くなったり、相手が気持ちの支えをたくさん求めてきたりすると、息苦しく感じ始めます。
- 場面1:付き合って3か月、相手が「お正月、うちの実家に一緒に来ない?」と言います。最初に浮かぶのは「早すぎない?」で、「そのとき考えよう」と答え、その後の数日は返信も少し遅くなります。
- 場面2:今日は仕事で大きなミスをして、すごく落ち込んでいます。家に帰ると相手が「今日大丈夫だった?」と聞きますが、「うん、ちょっと疲れただけ」とだけ答え、夜中までひとりでスマホを見ています。
回避型はよく冷たい人だと言われますが、たいていは相手のことを大事に思っています。それ以上に自分を失うのが怖いか、経験から「人に頼っても最後はがっかりするだけ」と学んできたのです。引き方はときにわかりにくく、関係が安定するほど相手の小さな欠点が気になりだしたり、「もっと自由だった」元恋人を懐かしんだりします。
引く理由が、自分は釣り合わないという感覚のこともあります。条件は悪くないのに、すごく大事な人の前ではどんどん緊張して、理由をつけてデートをキャンセルし、緊張しなくて済む相手のところへ戻っていく。持っている条件と自分の価値の感じ方がかみ合わないこの状態は、無料レッスン条件はそろっているのに、釣り合わない気がするでくわしく分解しています。
混乱型:近づきたいのに、近づくのが怖い
混乱型(恐れ回避型)は、不安も回避も高い状態です。親密さを強く求めているのに、いざ親密さが近づくと危険に感じます。
- 場面:いい感じの時期、自分から誘って、夜中まで話します。相手が真剣に応えはじめ、「ちゃんと付き合いたい」と言ったとたん、急に消えたくなります。数日後、相手を失うのが怖くなって、長い謝罪のメッセージを送ります。
押したり引いたりをくり返すこの状態は、本人もかなり疲れます。幼いころの経験が関係している人もいて、たとえばいちばん身近な人が、同時に自分を怖がらせる人でもあった、というケースです。ただ、全員がそうというわけではありません。それがもうかなりつらいなら、カウンセラーに話してみるとかなり楽になります。
愛着スタイルは変わる?よくある3つの誤解
誤解1:子どものころに決まって、一生そのまま。研究では、愛着の傾向にはある程度の安定性がありますが、動くこともわかっています。心理学者のクリス・フレイリーは、赤ちゃんのころから大人になるまで追いかけた数十の研究をまとめて分析し、子どものころの愛着と大人になってからの愛着の関係は中程度だと示しました。その間の経験が愛着を変えるということです。長く安定した関係や、自分の反応への気づきによって、少しずつ安定型に近づく人もいます。心理学には「獲得された安定(earned security)」という言葉もあります。
誤解2:人はひとつのタイプしか持たない。同じ人でも、相手が違えばかなり変わります。応え方が安定していて、言ったことをちゃんとやる人と一緒にいると、不安型の人はずいぶん落ち着くことがよくあります。温度差の激しい人と一緒にいると、もともとわりと安定していた人でも、スマホばかり気にするようになることがあります。だから「自分は不安型」は、もっと正確に言うと「この関係の中で自分はすごく不安」であることが多いのです。
誤解3:タイプがわかれば、言い訳になる。「自分は回避型だから、返信しないのは普通」という言い方は、練習できる傾向を免責の宣言に変えてしまっています。愛着スタイルは、なぜある衝動が出てくるのかを説明できますが、自分の行動の責任を代わりに取ってはくれません。逆も同じで、相手のタイプは、あなたがつらい関係にとどまる理由にはなりません。
「今週は自分の時間を多めにとりたい。日曜は一緒にブランチしよう。」
「自分は回避型だから、返信しないのは普通。」
1通送ったら止めて、自分のことをする
「私は不安型なんだから、もっと安心させてよ。」
相手の行動が安定しているかを見る
「彼は回避型なだけ。準備ができるまで待てばいい。」
自分の愛着スタイルがわかったら、何をする?
- 警報に気づく。次に心の中で警報が鳴りだしたら(スマホを見続ける、引く理由を探す)、まず自分に言います。「これは自分の警報で、まだ事実じゃない。」
- 警報が鳴っているときは、すぐに動かない。本サイトの考えでは、不安型寄りの人は相手を試さないこと、自分の不安を相手に預けないことです。何度も電話を求めたり、安心させる言葉を求めたりしていると、相手の目に映るあなたはどんどん軽くなります。1通送ったら止めて、自分のことをします。あの焦りは、たいてい十数分で大部分が引いていきます。回避型寄りの人は、ひとりの時間がほしいとき、それを沈黙にせず予定として伝えてみます。「今週は自分の時間を多めにとりたい。日曜は一緒にブランチしよう。」
- 自分に選べるものを持つ。不安型寄りの人は、生活がひとりの人を中心に回っていることがよくあります。友だち、仕事、運動、新しく知り合う人。手元にあるものが多いほど、相手の返信が1通遅れても世界の終わりのようには感じなくなります。
- 安心できる相手を選ぶ。気持ちだけでなく、行動を見ます。言ったことをやり、応え方が安定している人は、最初はそれほど刺激的ではないかもしれません。それでも、あなたの警報を少しずつ小さくしてくれます。
自分がどちら寄りかを知りたいなら、まず愛着スタイル診断をやってみるか、サイト内の10問のインタラクティブ診断を使ってみてください。考え方と練習をまとめて学ぶなら、愛着スタイルのインタラクティブなレッスンがあります。相手の返信が遅いととくに慌ててしまうなら、恋愛で重いと思われる心理も役に立つかもしれません。恋人との付き合い方の記事は、恋愛関係のトピックにまとめています。
セルフチェック:愛着スタイルを理解できているか3問
1. 相手から丸一日、既読スルーされた。いちばん筋が通った考え方は?
2. 不安型寄りで、今日はとくに不安。いいのはどれ?
3. 「自分は回避型だから、返信しないのは普通」。この言い方の問題は?
よくある質問
いちばん多い愛着スタイルはどれ?
ハザンとシェイバーの1987年の調査では、半数を超える人が自分を安定型だと答えました。その後の研究で数字はまちまちですが、安定型がいちばん大きなグループだという結果はおおむね共通しています。ただし、これらの多くは自己申告で、2本の軸の真ん中あたりにいる人も大勢います。
愛着スタイルは子どものころに決まる?
幼いころの世話役との経験は確かに影響しますが、それがすべてではありません。その後の友情、恋愛、人生の大きな出来事も、愛着スタイルを動かします。大人になってからも、愛着の傾向は経験によって少しずつ変わっていくことが研究でわかっています。
不安型と回避型は付き合える?
付き合えます。ただ、この組み合わせはとくに「片方が追いかけ、片方が逃げる」くり返しにはまりやすいです。不安型と回避型がくっつきやすい理由で、それぞれが何を怖がっているか、それぞれができる小さな調整をまとめています。
愛着スタイル診断は当たる?
研究で使う尺度は問題の数が多く、検証もされています。ネットの短い診断は、自分を観察するスタート地点として使うのが向いていて、診断の代わりにはなりません。結果が自分の感覚と違っても普通です。どの関係を思い浮かべて答えたかで結果は変わるからです。