金曜の夜、大学の同級生との飲み会の二次会で、駅前の居酒屋に流れた。テーブルにはビールの空きジョッキが並んでいる。しばらくいい感じだった相手は顔が真っ赤で、同じ冗談を2回言ってから、寄ってきて小声で言う。「このあと、そっちの家行ってもいい?」
酔った相手が「いいよ」と言ったら、それは同意になるのか。なりません。酔っている人は、ちゃんと同意することができません。食事と一緒にビールを1杯飲んで、話し方もまったく普段どおりの人なら、たいてい大丈夫です。難しいのはその間の広い範囲で、そこを判断するのに「何杯飲んだか」は役に立ちません。
すぐに使えるのは2つです。杯数を数えずに、相手のいまの様子を見る。相手が酔っているか迷ったら、酔っていると考える。1日待って失うのは、ひと晩です。読み違えたら、相手が払うものはずっと大きいかもしれませんし、あなたも同じです。
「何杯飲んだか」で判断できないのはなぜ?
同じ「3杯」でも、人が違えば、夜が違えば、意味はまったく変わります。体重、何か食べたかどうか、飲むペース、睡眠が足りているか、薬を飲んでいるか、もともとのお酒の強さ。どれもお酒の効き方を変えます。バーのカクテル1杯に標準的な量の2、3杯分のアルコールが入っていることもあって、しかも飲み口は全然強くない。人はお酒を飲んだあと、自分がどれくらい酔っているかを判断するのも難しくなります。他人のことならなおさらです。
杯数で考えると、質問自体もずれてしまいます。「相手は何杯を超えたか」。聞くべきなのは、この人がいま、何が起きているか分かっていて、自分が何をしたいか分かっていて、したくないときに「ノー」と言えるかどうかです。
相手が酔っているかどうか:この様子を見る
次のどれかひとつでも出ていたら、今夜の答えはノーです。
- ろれつが回らない、言葉がはっきりしない。ひとつの文を言い切れない
- 足元がふらつく。壁や椅子、あなたにつかまらないと立っていられない
- 同じことをくり返す。同じ話を2回する、同じ質問を2回する
- 記憶が飛ぶ。1時間前のことを忘れている、自分のスマホが見つからない
- 基本的なことに手助けが要る。タクシーを呼べない、鍵が見つからない、ドアが開けられない
- うとうとし始める。会話の途中で、いたりいなかったりする
- 吐いた。または顔色が真っ白で、明らかに具合が悪そう
- しらふのときとまるで別人。あまり親しくない人に急にべったりする、感情の上下が激しい、話の筋が通らない
もうひとつ、あなた自身に関わるサインがあります。心の中で「これって酔ってるうちに入る?」と考えているなら、その問いそのものを答えにしてください。自分を説得しないと成り立たない「いいよ」には頼れません。
こうしたサインを実際の場面でどう見分けるかは、無料レッスン酔っていると同意できないの場面問題で練習できます。
お酒はどうやって「いいよ」を当てにならないものにするのか
お酒の働きは、気分をほぐすだけではありません。注意を目の前のいちばん目立つものに絞り込んで、「このあとどうなるか」を考えにくくします。心理学者のクロード・スティールとロバート・ジョセフスは、これを「アルコール・ミオピア(お酒による視野の狭まり)」と呼びました。お酒を飲むと、人の反応は極端になります。ふだんなら立ち止まらせてくれる考えが、注意の外へ押し出されるからです。酔っている人は、しらふなら絶対に選ばないことにうなずくこともあれば、本当はしたくないのに「ノー」と言えないこともあります。
記憶も乱れます。よく言う「記憶が飛ぶ」は、お酒の影響の下で、歩いたり話したりはできているのに、脳がその時間を記録していない状態です。アメリカ国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)の解説によると、ある量まで飲むと、アルコールが脳の海馬による短期記憶から長期記憶への移し替えを一時的に止めてしまいます。お酒を飲む人なら誰にでも起こりえます。その場では何ともなさそうに見えて、次の日には何も覚えていない。だから「相手もあのときはその気に見えた」は通りません。
お酒は、聞く側にも影響します。飲むと、人は相手のサインを読み違えやすくなり、ないはずの意味をあるように見てしまいがちです。あなたも飲んでいるなら、相手の「いいよ」についてのあなたの判断も同じように当てになりません。自分が酔っていたことは、線を越えていい理由には一度もなりません。
ほろ酔いならいい?少し飲むのはいい。お酒に頼るのはだめ
夕食と一緒に1、2杯飲むのと、立っていられないほど酔うのは別の話です。少し飲んで気持ちがほぐれて、話が弾む。これは多くのデートにもともとある一部です。2人とも1、2杯飲んでからキスをする。2人とも明らかに「いつもの自分」で、話し方は自然で筋が通っていて、自分がどこにいるか分かっていて、相手もあなたに応えている。それなら問題ありません。
区別が要るのは「少し飲む」と「お酒に頼る」です。少し飲むのは、場をほぐすため。お酒に頼るのは、相手が飲みすぎれば話が通りやすくなると期待することです。後者は最初から道を間違えています。その前に相手があなたに気持ちを向けていなかったなら、お酒で埋め合わせはできません。相手がお酒を飲まない人でも、普通に誘います。カフェにする、散歩にする、それで済みます。逆に、先に「このあと一杯飲もう」と言っておいて、その場で「今日は飲まないでおこう」と言い直す人もいます。自分からお酒を外すと、あなたがそういうつもりでないことが相手にもはっきり伝わって、次の場所についていくのも安心できます。
迷ったら、酔っていると考えます。言うならこんな感じです。
今夜本当に2人とも気持ちがあるなら、しらふのときもあります。1日待っても、何もなくなりません。
飲ませる、勧め続ける、酔いつぶれた人を連れ帰る:全部レッドライン
デートのアドバイスの中には、お酒を道具として扱うものがあります。デートは必ずバー、1杯また1杯と重ねて、相手が根負けするまで飲ませる。このやり方は、まず相手が「ノー」と言う力を奪って、それから「いいよ」をもらおうとしています。日本では2023年の刑法改正で「不同意性交等罪」が設けられ、アルコールの影響などで同意しない意思を示すことが難しい状態での性的な行為も処罰の対象になりました。多くの国や地域でも、意思を示せないほど酔った人との性行為は罪になりえます。
自分にとっての得だけで考えても、割に合いません。お酒の力で手に入れた結果は、あなたという人に魅力があるかどうかに何の足しにもなりません。お酒を飲まない人に会ったら、打つ手がなくなります。相手はしらふに戻れば、酔っていたときに見たあなたと違うと気づいて、もう会わなくなりますし、訴えられることもあります。朝4時、5時まで引き止めて、相手が「もういいよ」と言うまで粘るのも同じことです。
次のようなことは、全部「飲ませる」に入ります。
- 相手が頼んでいないのに、自分で注ぎ足す
- 相手にスペシャルやダブルを頼む、わざと「これ全然薄いから」と言う
- 相手がもう飲まないと言ったのに「最後の一杯だけ」と言う
- 飲みゲームやコールで、相手に何杯も飲ませる
- 「飲まないとか、ノリ悪くない?」と言う、水に替えた相手をしらけると笑う(いわゆるアルハラ)
- 自分の家で酔うまで飲む流れのデートを組む
相手が言った上限が上限です。勧められている側は、理由を説明しなくていい。
それから、クラブや路上で酔いつぶれた人を、そのすきに連れて帰る行為。ここにはグレーゾーンはまったくありません。犯罪です。
いいやり方はこうです。何をどれだけ飲むかは、それぞれが自分で決める。相手が言った上限が上限。デートにお酒がなくてもかまいません。カフェ、散歩、展示、マーケット、どれもいいデートです。誰かが別の人に飲ませているのを見かけたら、ヒーローになる必要はありません。話題を変える、その人に水を渡す、その人の友達を呼んでくる。どれもちゃんと意味があります。無料レッスン飲ませるのはレッドラインで、こうした動き方をひととおり練習できます。
相手が飲みすぎたら、あなたがやること
このとき、あなたの役割は「デートの相手」から「相手を無事に家まで帰す人」に変わります。体に触れるのは全部やめて、水に切り替えて、相手が信頼できる人と一緒に帰れるようにします。タクシーを呼ぶなら、行き先があなたの家ではなく相手の家になっているか確かめます。ひどく酔っている人を、ひとりにしないこと。呼んでも起きない、呼吸がとても遅いか不規則、肌が青白いかひどく真っ白、けいれんしている、意識がもうろうとしたまま吐き続ける。これは急性アルコール中毒の典型的なサインなので、すぐに救急車を呼びます。119番です。電話をするのは、少しも大げさではありません。
その場から帰り道、相手の家の前まで、一歩ずつ何をすればいいかは、友達が酔ったら、無事に帰すにはにくわしいチェックリストがあります。
デートで自分がお酒を飲むとき、自分を守るには
責任は、人の弱みにつけこもうとする側にあります。あなたにはありません。そのうえで、夜を少し楽にしてくれる習慣があります。まだよく知らない相手ならとくにです。自分で頼んで、自分で受け取る。出かける前に上限を決めて、合間に水を挟む。席を離れて戻ってきたら、目を離していたグラスは飲みきらない。帰り方は自分で決めておく。急にいつもよりずっと早く酔いが回ったと感じたら、すぐに店員さんか友達に伝えて、店を出ます。くわしいチェックリストは初デートの安全チェックにあります。レッスン酔っているのは同意じゃないでは、友達と一緒にお酒の安全プランを立てるところまで練習します。
お酒を飲んだあとに、自分が同意していないことが起きたなら、悪いのはあなたではありません。お酒を飲んだからといって、ほかの人の選択の責任をあなたが負うことにはなりません。まず安全を優先してください。性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891 に電話できます。誰かに話を聞いてほしいときは、よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)があります。緊急のときは110番です。同意の基本は同意とは何かにまとめています。しらふのときにキスしたいと思ったらどう聞けばいいかは、「キスしていい?」の聞き方を見てください。ほかの記事は同意のトピックにあります。
セルフチェック:判断できる?
1. いい感じの相手が顔を真っ赤にして、同じ冗談を2回言ってから、寄ってきて「このあと家行ってもいい?」と言う。今夜の答えは?
2. 心の中で「これって酔ってるうちに入る?」と考えている。この問いが意味するのは?
3. 相手が「今日はここまでにしとく」と言ったのに、友達が「最後の一杯!」とはやし立てている。あなたにできることは?
よくある質問
ほろ酔いでも同意できる?
できることもあります。相手が1、2杯しか飲んでいなくて、明らかにいつもの自分で、話し方も自然で筋が通っているなら、大丈夫かもしれません。相手がどの状態なのか分からない、2人ともちょっとぼんやりするくらい飲んでいる。そういうときは酔っていると考えて、また今度にします。
2人とも酔っていたら、どちらも同意できない?
どちらの判断も当てになりません。2人とも、「いいよ」を出せる状態にも、「いいよ」を読み取れる状態にもいないからです。いちばんいい決め方は、今夜は何も決めないことです。自分が酔っていたことも、線を越える言い訳にはなりません。
相手が酔っているときに「いいよ」と言ったら、数に入る?
相手がもう、話し方や歩き方や判断に影響が出るほど酔っているなら、入りません。酔っているときの「いいよ」は当てになりませんし、相手は自分がそう言ったことすら覚えていないかもしれません。
記憶が飛んでいる人は、しっかりして見える?
実際よりずっとしっかりして見えることがあります。記憶が飛んでいるときも、人は歩けるし、話せるし、会話までできます。ただ脳が記録していないだけです。だから「相手は平気そうだった」では足りません。迷ったら、酔っていると考えます。