木曜の夜10時、LINEが届く。「ねえ、今月の家賃があと4万足りなくて。来週給料が入ったら返すから、お願いできる?」4万円なら出せる。でも思い出してしまう。先月はスマホ代の1万5千円、その前は友だちの結婚式のご祝儀の1万円。どちらもまだ返ってきていない。
彼氏にお金を貸してと言われる、彼女にカードの支払いを頼まれる、恋人が急にお金が必要だと言う。一度だけなら、それ自体は問題とは限りません。付き合いが長くなれば、本当に困るときは誰にでもあります。見てほしいのはパターンです。親しくなるにつれて頼まれる回数が増えていないか。額がだんだん大きくなっていないか。返済のことを聞くと、話が「愛してるかどうか」にすり替わらないか。当てはまるなら、お金だけの問題では済みません。お金が気持ちを縛る道具として使われ始めています。
ここに書く場面は性別を問いません。誰でも、借りる側にも貸す側にもなりえます。
一度きりの急な出費と金銭支配は、どこが違う?
| 一度きりの急な出費 | 金銭支配のパターン | |
|---|---|---|
| 頻度 | たまに。具体的な出来事がある | 親しくなるほど増え、理由が毎回変わる |
| 金額 | はっきり言え、出来事と合っている | 少額から少しずつ大きくなる |
| 返済 | いつ返すか自分から言い、実際に返す | ほとんど返さない。少し返して、もっと借りる |
| お金のことを聞くと | 当然だと受け止め、一緒に確認する | 「そんなに細かく計算するの?」「愛してないの?」 |
| 断ると | がっかりしても、ほかの方法を探す | 怒る、無視する、別れ話を持ち出す |
| その結果 | 二人とも自立した一人のまま | だんだん断れなくなり、離れにくくなる |
いちばん見てほしいのは最後の行です。健全なお金の貸し借りなら、貸したあとも二人ともに選択肢が残ります。支配のためのお金のやりとりは、片方をだんだん動けなくしていきます。お金で縛る手口のレッスンでは、この循環を細かく分けて見ていきます。貸した額が増えるほど離れるのが惜しくなり、そこが人を縛る場所になります。
恋人にお金を貸してと言われる5つの場面と返し方
場面1:本当に急いでいて、説明もはっきりしている
見分け方:付き合って2年。相手の車がぶつけられ、保険金が出るまで1か月かかるのに、修理代が6万円かかる。相手は自分から金額と返す時期を言い、保険金が入るとすぐに振り込んでくれた。
返し方:貸してかまいません。ただし、あなたが負担できる額だけにしましょう。目安は、返ってこなくても相手を恨まずにいられる額です。LINEでひとこと「6万円貸すね。保険金が出たら返して」と確認しておきます。こうしておけば、二人とも記憶に頼らずにすみます。
やめておくこと:貸したあと何度も催促する。あとのケンカで持ち出す。貸したお金は貸したお金として扱い、言い合いの材料にしないことです。
場面2:親しくなるほど頼まれる回数が増え、額も大きくなる
見分け方:付き合って2か月目はランチ代の3千円。4か月目はスマホ代の1万5千円。6か月目には「友だちとカフェを開くから、30万貸して。3か月で元が取れる」。理由は毎回違い、前の分はまだ返っていない。頼んでくるのは、甘い言葉を交わした直後のことが多い。
返し方:いったん止めて、見えているパターンをそのまま伝えます。「付き合ってから、お金を貸すことがずいぶん増えたと思う。いったん止めたいし、これまでの分をどうするかも話したい。」言ったあとの相手の反応を見てください。お金そのものより、その反応のほうが多くを教えてくれます。
やめておくこと:「これで最後」と自分に言い聞かせて貸すこと。前回も同じことを思ったなら、今回が最後になる見込みは低いです。
場面3:お金と愛がセットにされる
見分け方:今月は自分も苦しいと言うと、相手が言う。「付き合ってるのに、あなたのお金と私のお金を分けるの?」「貸してくれないなら、私のことなんてどうでもいいんだね」。あるいは別の形で、「そっちのほうがずっと稼いでるんだから、これくらいはした金でしょ」。
どの言い方も、あなたの「ノー」を、愛がないかケチなことのように聞こえさせます。でも、お金は持ち主が出すかどうか、いくら出すかを決めるものです。「はした金でしょ」と、ほかの人があなたの代わりに配分を決めることはできません。
返し方:「好きなことと、お金を貸すかどうかは別の話。今回は貸さない。」貯金がいくらあるかを説明する必要も、本当にないことを証明する必要もありません。罪悪感で譲歩させる言い方の例と返し方は、恋人が罪悪感で縛ってくるときにもっと載せています。
やめておくこと:お金で愛を証明すること。一度証明すると、次はもっと大きな証明が必要になります。
場面4:お金があなたの逃げ道をふさぎ始める
見分け方:ここまで来ると、お金の貸し借りを超えた経済的な支配です。給料の口座やキャッシュカードを渡させて「まとめて管理する」と言い、あなたがお金を使うたびに報告させる。あなたの名義でカードローンを組ませたりクレジットカードを作らせたりして自分が使う。連帯保証人にならせる。「俺が養うから」と仕事を辞めさせ、ケンカになると「誰のお金で食べてると思ってるんだ」と言う。逆のパターンもあります。相手が先に大きな額を貸しておき、あなたが別れを切り出すたびに「じゃあ先に金を返せ」と言う。ソーシャルワークの研究者ジュディ・ポストマスらがパートナーからの暴力を生き延びた120人に聞き取りをしたところ、94%が何らかの経済的な支配や搾取を経験し、8割近くが仕事を妨害されていました。
返し方:この場面では、正面からぶつからないでください。静かにいくつかのことを進めます。自分だけが知っている口座を作る。身分証や通帳を自分が取り出せる場所に置く。信頼できる友だちに状況を知らせておく。怖いと感じたら、先に記事の最後にある相談先を見てください。
やめておくこと:あなたの名義でお金を借りる書類に、これ以上サインすること。その借金は、別れたあともあなたについてきます。
お金は支配のひとつの面にすぎないことが多いです。ほかの面は束縛する恋人と健全な関係の違いと照らし合わせてみてください。
場面5:まだ会ったことのない人が、お金を貸してと言う
見分け方:ネットで知り合って1か月、毎日やさしいメッセージをくれていた相手が、急に「家族が入院した」「荷物が税関で止められた」「口座が凍結された」と言い、先に払ってほしいと頼んでくる。あるいは、お金を貸してとは言わずに、「確実にもうかる」投資サイトを熱心にすすめてくる。
返し方:これはほぼ詐欺です。迷う必要はありません。「会ったことのない人とお金の話はしない。」そう言って終わりにします。全体の流れと、各段階での見抜き方はロマンス詐欺の見分け方にまとめています。こうしたメッセージへの返し方を練習したいなら、マッチングアプリの詐欺のレッスンにいくつも場面があります。
恋愛でお金を貸すときの線引き
どの場面でも、次のルールを先に決めておけます。できれば頼まれる前に考えておきましょう。頼まれたその場では、冷静になるのが難しいからです。
- 失っても相手を恨まない額だけ貸す。その額を超えるなら、相手がどれだけいい人でも、まず断ります。
- 相手に貸すために、自分が借金をしない。カードローンを組まない、キャッシングをしない、保証人にならない。どれも相手の困りごとを、あなたの借金に変えてしまいます。
- 毎回、文字で記録を残す。金額、日付、いつ返す約束か。LINEでひとこと確認すれば十分です。
- 前の分が返ってくるまで、次は貸さない。約束したことを守るかどうかは、人が信頼できるかを見るいちばん基本の方法です。言ったことを守るかを見る無料レッスンでは、小さな約束で人を見る方法を教えています。お金を返すのは、とても具体的な小さな約束です。
- お金と気持ちの話を分ける。ケンカの最中、愛してると言った直後、別れ話のときにはお金の話をしない。そういうときにお金の話をすると、お金が別の目的に使われます。
- お金で近さを買わない。これは貸す側に向けた一行です。貸さないと相手が離れていく気がして、お金を出してしまうことがあります。おごる、プレゼントする、貸す。本心から出すならいいことです。罪悪感や失う怖さから出しているなら、そこで止めましょう。お金を払うときの気持ちのレッスンで扱っているのは、この違いです。
好きな人を本気で助けたいときも、現金を渡す以外の方法があります。一緒に予算を立てる、公的な支援や分割払いの方法を一緒に探す。そのほうが、まとまったお金より役に立つことがよくあります。
そのまま使える返し方
先にルールを決めておけば、頼まれるたびに迷い直さずにすむ。
あなたを尊重している人なら、これを聞いてがっかりはしても、ほかの方法を探します。これを聞いたとたんに怒る、無視する、あなたがどれだけ自分勝手かを並べ始める人は、この関係でお金が何に使われているかを早めに見せてくれたことになります。カップルがふだんケンカせずにお金の話をする方法は、カップルのお金の話し方を参考にしてください。
相手があなたのお金を管理している、借金であなたを縛っている、断ったときに脅してくる。そんなときは安全を最優先にしてください。DV相談+ 0120-279-889(24時間)に相談できます。誰かに話を聞いてほしいときは、よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)へ。緊急のときは110番です。お金以外の操作の手口は、危険信号のトピックページにまとめています。
セルフチェック:線引きを守れるか3問
1. 付き合って6か月、貸したお金が3千円から1万5千円、さらに30万円に増え、前の分は返っていない。いい対応は?
2. 相手が「貸してくれないなら、私のことなんてどうでもいいんだね」と言う。いい返し方は?
3. 1か月やりとりしているネットの知り合いが「家族が入院した」と言い、先に払ってほしいと頼んでくる。これは?
よくある質問
彼氏にお金を貸してもいい?
たまに一度だけで、額があなたの負担できる範囲で、相手がいつ返すかをはっきり言えるなら、貸してかまいません。すすめないのは、彼に貸すために自分が借金をすること、前の分が返っていないのに新しく貸すこと、彼の機嫌を損ねるのが怖くて貸すことです。貸す前に、このお金が返ってこなくても受け入れられるかを考えておきましょう。
貸したお金が返ってこないときは?
まず文字で一度、きちんと請求します。金額と、いつまでに返してほしいかをはっきり書きます。相手がずっと先延ばしにする、借りたこと自体を認めないときは、メッセージと振込の記録をすべて残しておきましょう。多くの国や地域に、少額のお金を簡単な手続きで請求できる裁判所の制度があります。まずは公的な法律相談の窓口で聞いてみるのもひとつの方法です。お金のことは、別れる前に話をつけておくほうが、別れたあとよりたいてい楽です。
「貸してくれないなら別れる」と言われたら?
その関係では、もうお金があなたより大事になっています。「お金を貸してこの関係をつなぎとめることはしない」と伝えてかまいません。それで相手が本当に離れていくなら、あなたが失うのは、愛をお金を引き出す条件にする人です。
恋人が本当に困っていて、助けたいけれど巻き込まれるのが怖いときは?
助け方を、具体的で上限のある形に変えましょう。現金を渡すより、家賃の一回分を大家さんに直接払うほうがいいです。あるいは「この3か月は毎月これだけ」と決め、期限が来たら一緒に見直します。上限を決めておけば長く助けられますし、助けるほど恨みがたまることもありません。