ネットでよく見るデートのアドバイスに、「人は自分の話をするのが好きだから、たくさん質問して相手に話させればいい」というものがあります。これは半分だけ正しい話です。そのとおりにやった人は、丁寧でなめらかなのに、相手が帰ってからあなたのことをまったく知らない、というデートになりがちです。
デートで自分の話をするのは、自慢とも、経歴の暗唱とも違います。相手が「この人のことをもっと知りたいか」を判断できるだけの情報を渡すことです。やり方はひとつのやりとりにまとめられます。質問に答えて、具体的な小さなエピソードを1つ添えて、同じ質問を返す。相手が3の深さで話したら、こちらも3、多くても4で返します。
これは性別に関係ないので、ここからは「相手」で書きます。
衛星デートとは?
衛星デートとは、デートの間ずっとあなたが質問していて、あなた自身はほとんど会話に出てこない状態のことです。衛星のように相手のまわりをぐるぐる回り、質問を送り出して答えを受け取るだけで、最後まで着陸しません。
だいたいこんなふうに聞こえます。
どの質問も丁寧で、相手はどれにも答えています。30分たって、相手が知ったのは1つだけです。あなたは質問がうまい。
簡単なチェック方法があります。明日、相手の友達が「で、その人どうだった?」と聞いたとき、相手は「いい人だった、質問上手だった」以外に何か言えるでしょうか。言えないなら、それは衛星デートです。衛星デートのレッスンでは、自分の会話の中からこのパターンを探します。
うまくやろうとするほど、質問ばかりになるのはなぜ?
衛星デートにはまる人は、たいてい話すのが下手なわけではありません。もっともな心配がいくつかあるだけです。
自分の話をすると自慢っぽくなるのが怖い。小さいころから謙虚でいるよう教わってきた人は多く、聞かれても「いや、ふつうの会社員です」と答えます。この謙遜は年上の人の前なら礼儀正しいのですが、デートで使うと、相手が差し出してくれた扉をそっと閉めることになります。
「質問を多くする」をルールとして実行している。いろいろな解説を見てきて、頭の中にリストがあります。開かれた質問をする、聞き返す、相手にたくさん話させる。どれももっともですが、話しているのではなくリストを実行しているとき、相手にはそれが伝わります。この状態を私たちは「理論中毒」と呼んでいます。無料レッスンの理論中毒で、自分がプログラムを走らせているときに気づけるようになります。
自分の生活はそんなに面白くないと思っている。話しても誰も聞きたがらないと思って、話さないことにする。でも相手が知りたいのはあなたがどんな人かで、話が派手かどうかはそれほど大事ではありません。
なぜ聞くだけで話さないとうまくいかないのかは、恋愛の心理学でも説明できます。自己開示(self-disclosure)には、お互いに引き出し合う傾向があります。片方が少し自分のことを話すと、もう片方もたいてい同じくらいの深さで少し返します。2人はこうして一段ずつ親しくなっていきます。心理学者のナンシー・コリンズとリン・ミラーは数十年分の研究をまとめて、自分のことを話す人は一般に好かれやすいことを見つけました。人は好きな相手には多く話しやすく、話したあとはその相手をさらに少し好きになります。あなたがずっと口を開かなければ、この往復が始まりません。逆に、知り合ったばかりで深く速く話しすぎると、相手が一歩引くこともあります。これはあとで触れます。
デートで自分を出す4つのやり方
1. 事実に答えて、ついでに「なぜ」を言う
「仕事は何してるの?」「小学校の先生。」これは事実で、履歴書の1行のようなものです。相手は1行からあなたを知ることはなかなかできません。
事実のあとに、少しだけ理由や気持ちを足してみてください。「3年生の担任をしてる。この仕事を選んだのは、子どものころにすごく話のうまい先生がいたから。その先生の怖い話、今でも覚えてる。」同じ十数秒でも、相手には職業に加えて、あなたが何を大事にしているかまで伝わります。
好きなことも同じです。「山登りが好き」はただのラベルです。「途中で本気でやめたくなって、頂上に着くとやっぱり来てよかったと思う、あの感じが好き」。この一文が、あなたです。
2. 答え1つに、具体的な小さなエピソードを1つ
休みの日は何をしているのかと聞かれたら、「家でゆっくりしてる」だけで終わらせず、趣味を5つ一気に並べることもしません。最近本当にあったことを1つ選んで、30秒くらいで話します。
「最近ベランダでミニトマトを育ててる。最初の2鉢は水のやりすぎで根腐れさせて、3鉢目でやっと育った。先週最初の1個がなったけど、もったいなくて食べられない。」
こういう小さなエピソードには映像があって、ちょっとした失敗があって、受け取りやすいのです。相手は笑うかもしれないし、なぜミニトマトを育てようと思ったのか聞いてくるかもしれないし、自分が枯らした多肉植物の話を始めるかもしれません。すごい話である必要はありません。具体的で、本当のことならそれで十分です。
3. 同じ質問を返して、本当に聞く
自分の話をしたら、同じ質問を相手に渡します。「そっちは?休みの日に決まってやることある?」。大事なのは聞いたあとです。相手の答えを受けて話を続けます。相手の答えを踏み台にして、3文もしないうちに自分の話に戻らないこと。
このステップで、自分を出すことが交換になります。あなたが先に少し出して、相手が少し返す。そうして初めて会話に行き来ができて、2人が順番に壇上で演説する形になりません。
4. 相手が3なら、こちらも3
深さは相手に合わせます。相手が最近仕事で疲れていると言ったら、自分の繁忙期の様子を話せばいいのです。相手が家族のことを軽く触れる程度にとどめたなら、あなたも家族の歴史を広げる必要はありません。相手より少しだけ深いのはあたたかさですが、深すぎると負担になります。相手は、まだ受け止めきれないものを背負わされた気持ちになります。
自分を出すことと自慢、何が違う?
自分の話ができない人の多くは、自慢に聞こえるのを怖がっています。見分け方は難しくありません。自慢は結果と順位を話し、自分を出すことは過程と自分が気にかけていることを話します。
「去年は営業成績を追いかけすぎて、年末には電車で2回寝過ごした。今は水曜は絶対定時で帰ってる。」
「去年、営業成績が社内で1位だった。」
「最近角煮を練習してて、祖母の味に戻すのに3回作った。」
「料理が得意で、友達には店より美味しいって言われる。」
「最近やっと自分でワイパーを替えられるようになって、達成感が大きすぎて笑える。」
「新しい車に替えたんだ。」(誰も聞いていない)
生活の中の本当の小さな一コマに触れて、相手に気づいてもらう。「午後に父の工場に寄ってくる」
いきなり年収を言う、貯金を見せる、ブランドや肩書きの話ばかりする
左の列が必ずしも謙虚なわけではありません。成績表は出さずに、1人の人を知ってもらっているだけです。最後の項目はとくに気をつけてください。条件をそのまま並べると、自分を売り込んでいるように聞こえます。生活の中でふと出た本当の一コマから相手が自分で組み立てるほうが、印象はかえって強く残ります。聞かれたら堂々と答えればよく、隠す必要はありません。そのあと話を相手に返します。
自分を出すことと打ち明けすぎの境目は?
逆の極端は、話しすぎることです。初デートで、両親の離婚のいきさつ、前の恋愛で裏切られた細かい話、最近飲んでいる薬のことまで話してしまう。たいていは緊張しているか、わかってほしいか、「本当の自分を受け入れてくれるか」を早く確かめたいからで、相手を信頼しているからとはまだ言えません。
2つの質問で確かめられます。
- 又聞きテスト:相手が明日この話を共通の友達にしたら、あなたは気にしますか。気にするなら、とっておきます。
- 動機テスト:この話をするのは、相手に自分を知ってほしいから?それとも慰めてほしい、認めてほしいから?後者なら、今は話さなくていいかもしれません。
重い話をしてもかまいません。ただ、もっと親しくなって、一段ずつ交換し合ってからにします。自分を出すのは、相手に情報を渡して、近づくかどうかを相手に決めてもらうことです。打ち明けすぎは、たいていその場の反応と引き換えにしようとしていて、相手をまだ準備のできていない立場に置いてしまいます。さじ加減は、自分を出すペースのレッスンで、いろいろな深さの場面を練習できます。
答えなくてもいい、ということも忘れないでください。「それはもう少し仲良くなってから話すね」は、まったくふつうの一言です。元恋人の話のような、いちばん話しすぎやすい話題については、デートで元恋人の話をしていい?で分けて説明しています。
デートだけでなく、ふだんの会話もよく書類の記入みたいになると感じるなら、会話が面接みたいになるで2つの話し方を表で比べています。自分の話を先にいくつか用意しておきたいなら、面白い人になるにはを見てください。会話をもう少し深いところに進めたいなら、36の質問にデート向きの質問をまとめています。デートの記事はデートのトピックページにあります。
セルフチェック:自分の話ができているか3問で
1. 休みの日は何してるのと聞かれた。いちばんいい答えは?
2. 自慢に聞こえず、自分を出しているように聞こえるのはどれ?
3. 初デートで、前の恋愛で裏切られた細かい話をしたくなった。まず自分に何を聞く?
よくある質問
デートでずっと質問するのはよくない?
質問すること自体はいいことで、好奇心がある証拠です。問題は聞くだけで話さないことです。相手が答えたあと、自分のことを何も足さずに次の質問に移ってしまう。質問2〜3個につき1回は自分の話をすると、質問の数が同じでも感じ方がまったく変わります。
デートの自己紹介では何を話せばいい?
学歴と職歴の全集はいりません。今何をしているかを一言、最近気にかけていることや取り組んでいることを1つ、そして相手への質問を1つ。これで十分いい始まりになります。たとえば「インテリアデザインの仕事をしてる。最近は年配のご夫婦のキッチンを直していて、2人は調理台の高さで3回ケンカしてた。そっちの仕事でもこういうことある?」
相手がずっと質問してきて、自分の話をしない。どうする?
まずはきちんと答えて、それからやわらかく質問を返します。「今度はそっちの番。最近何か面白いことあった?」。2〜3回試しても相手が聞くだけで話さないなら、すごく緊張しているだけか、まだ自分を知ってもらうつもりがないのかもしれません。軽くそのまま言ってもいいです。「ずっと自分の話をしてるから、そっちの話も聞きたい。」
初デートではどこまで深い話をしていい?
又聞きテストを上限にします。共通の友達に話されても気にならないことなら、何を話してもかまいません。家族の衝突、心身の状態、前の恋愛の細かい話は、あとにとっておきます。相手が深めの話をしてきたら、少しついていくのはいいですが、一気に底まで行かないこと。